第26章 だから師走というんです
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空が時間と共にどんどん暗くなっていく中、街中はイルミネーションでとても賑やかな明るさになってきていた。
路上には人が溢れてる。それこそ幸せそうに歩くカップルが多く、また仕事中の人達は客引きをしたり、サンタのコスプレをしていて、あちらこちらで鈴の音を多く取り入れたクリスマスにちなんだ曲が流れてる……童謡だったり、洋楽だったり邦楽だったり。
人で溢れかえっていれば呪いももちろん存在していて。
いつものようにこちらに吸い寄せられてくる呪いは、私達に近付く最中に体が裂け、時には捻れてその存在が消えていく。二体、三体…と。
この原因は彼のお陰だ、と隣を歩く悟を見上げると彼は楽しげにウインクをしていた。
「タワーディフェンスゲーム」
『…こら』
何を楽しんでるのやら、と少し浮かれた悟の手を彼のポケットの中でぎゅっと一瞬だけ、強く握り返した。
『私でタワーディフェンスゲームすな』
「ククッ、ごめんねごめんねー!ちょっかい掛けちゃいたかったのー」
『はいはい、いつもの病気ねー…。こうも浮足立つようなイベントじゃあさ、悟じゃなくても呪術師は忙しくなるよねえ……』
……完全オフ状態の私達が言うのもなんですが。
ちなみに悟は昼間の部だけ任務を済まして、一番忙しいだろうイヴの夜の部は抜けている。「今年は家族サービスで、僕は今夜は担当しないよーん!というかさあ…僕たち新婚夫婦の初めてのクリスマスの時間を奪うのかいっ!?」と電話越しにキレてた。高確率で伊地知辺りのような気がする。
……でも私は知ってる、毎年ケーキを作ろうねって言ってる悟を。来年は来年で何か違う言い訳になるんだろうなぁ~…と、予約しても既に引き取りの列が出来ている中、一緒に列に並んでる悟を見上げた。
チキンの良い匂いが漂う中、悪びれた様子もなく完全オフの悟ににこ、と笑いかけられて。
彼のコートのポケット内で握られた手が暖かくて行列の中でも私はずっと悟と手を繋いだままでいる中、きゅっ、きゅっとリズムを取るように私の手を絡めたまま数度握られる。
「そうだねえ。普段僕が頑張ってる分、他の呪術師の諸君には頑張って貰いたいね。今夜は僕がハルカを守るから安心して今年のクリスマスを楽しもうね!」