第26章 だから師走というんです
ぱあ…っ!と表情が明るくなる悟と、助かった、とでも言いそうな肩をすくめた伊地知。悟の手首を掴み、私は伊地知に向かって頭を下げる。
『忙しい中邪魔してしまってすいません、この人回収していきますんで!』
「い、いえ…五条さんも昨日のお写真の事嬉しかったんでしょうね、分かりますよ……はい、お綺麗でしたし」
書類を抱え直す伊地知。悟がずい、と伊地知側に身を寄せた。
「でっしょー!?で、抱えたブーケもね、僕にちなんだ青と白でさー!もーマジ最高に、」
『おだまりっ!……ほんっとすいませんね、伊地知さん。ほら悟!行くよ!口を動かさず足動かす!』
まだ何か言いたそうな悟を引っ張り、「まだ伊地知に言う事あったのにー!」という悟を仕事の忙しそうな伊地知から完全に引き剥がす。手を掴んで速歩きで車庫方面へと急ぎつつ。
後は車庫まで引っ張り続けりゃ任務完了よ、あー流石放課後、お腹減ってきた。早くチキンが食べたいなあ…と彼をぐいぐい引っ張り辺りを警戒しながら進んで。
「フフ…強引なオマエも好きだなあ。で、ハルカ、何警戒してんの?」
『警戒って……出会い頭に昨日の写真について説明するからだよ』
自分の足で歩いてる。けれども悟は私に引っ張られていた。私は前を見て、時々左右を確認して進む。
私の背中に「え~?」と疑問の声が掛けられて振り返りながら私は足を進めた。
『ん、えーって何?』
「嬉しくないの?だって僕たちの晴れ姿だよ?僕は自慢したい、ハルカがすっごく綺麗で可愛くて、華やかで……見とれちゃって。幸せな昨日の一面をずっとずっと見ていたいし、皆に見せて幸せを分かち合いたいんだけど?」
背後からの悟の想いは充分に伝わってる。彼から視線を前方に向けてさっさと足を動かす。
……想いが充分に伝わってるからこそ、顔全体が、耳が熱くて困った。振り向けない。そのままに私は斜め後ろを引っ張られて着いてくる悟に返事をする。
『……そういうのっ!見せるくらいなら良いけど…、そんなに悟に褒められると聞いてて私、恥ずかしいもん』
「ン゙っ、待って。やだ、ハルカお耳真っ赤じゃーん!そんな反応されると余計に可愛くてGLGの表情筋も崩れちゃうっ!その真っ赤なお耳、はむはむしていい!?」
『や・め・ろ』