第26章 だから師走というんです
『さむっ!』
「あ、僕今冬が好きになった。冬が好きになりましたよー?ハルカからこういうのされるのなら一年中ずっと冬でもいい!」
『ふざけんな、冬以外の季節を回せっ!』
ぎゅっとしがみつくと暖かくて、素肌を晒して冷たい制服に着替えて冷たい外気に晒されながらの学校なんて行ってられっか!とこのままで過ごしたいくらいに安心が出来た。
一昨日よりも昨日、昨日よりも今日って日々幸せだなあ、と噛み締めて。クククッ、と笑う悟の顔を覗き込んだ、私がしがみついたままで。
そこには朝から少し盛りのついた獣の表情。優しいスカイブルーがギラついてる。
「寒いなら温まる運動、する…?」
運動と書いてセックスを意味する何度も聞いた言葉に首を振った。そんな時間などないし。疲れるし、素肌を晒すし。
……今晩、昨日並にするだろうし。私は悟じゃないんだ、そんなゴリラみたいな体力持ってないもん。
『……やだ。疲れるし。時間ないし…悟、しつこいし』
「えー?じゃあお手軽短縮コースは?一回出すくらいさ?朝勃ちなんとかするくらいのえっちは冗談抜きでしたいなー」
……どうせ今夜もするだろうし。とは誘うみたいだから敢えて言わず。とぼけた顔して手をこちらに伸ばし、彼は私の髪を指で梳く。優しい手付きに眠くなりそうだけれど、今寝たら大人としてどうかって話。
「じゃあ起きな?運動して遅刻したいのなら僕はもう少しこのままでも良いけど…?」
『はい、起きます!起きた!顔洗ってこよー』
蜘蛛の巣に掛かった獲物をゆっくりと捕食していくような優しさに本気が見え隠れしてて、暖を取るようにしがみついてた手足を悟から離す。梳いてた指は空を掻いてるのが見えて、残念そうな表情の彼だけがベッドに残ってる。飛び起きて触れた床が冷たくて思わずつま先立ちになる。昨晩の騒動ん時にどっかに蹴り飛ばしたな…?くっそ、新品のふかふかのスリッパどこいった…?