第26章 だから師走というんです
心の声が聴こえたわけじゃないと思うけれど、目の前でゆっくりと開く瞼。ちら、と見せたスカイブルーが細められて。
「……どうしたの?眠れない?」
狸寝入りで起きていたのか、熱視線で起こしちゃったか。「子守唄歌う?すっげぇいい歌声で全力で眠らせてあげるけど?」と言われ、悟に歌われたら余計に眠れなくなりそうだから『いい、すぐに寝るから』と言って今日二度目のおやすみ、とお互いに声を掛け合って。目を閉じれば幸せな気分のままに眠りへと落ちていく。
ぐったりとなるほどに愛された翌日はクリスマス・イヴの日。
イヴの朝がやってきても通常の学校と同じく呪術高専の学生もまだ通常通り登校する日。学校だけど昨日の今日で疲れが取れてなかった。どんなに幸せだと感じても疲れるような事をしたのだから仕方がない、可能ならば二度寝したい。許されるなら超ギリギリまで寝たい。
渋い目を開ければ腕枕をする悟がこっちをじっと見ていた。
「……おはよ。オマエ、眠そうだね~」
『……んー…』
まだおはようしたくないな…。私はおやすみの真っ只中、半目を開け悟を見た後にぐるん、と悟に背を向けると片手が私の肩を掴んでそれを阻止しようとしてくる。掴んだ温かい手が小刻みに私の体を揺らして。
「いや、待って?キミ今日学校でしょ?ダメだよ、ズル休みしちゃ」
『ふわぁ……しょうがねえな…』
担任だもん、自分のクラスの生徒が二度寝しようとしてるんだ。その二度寝を止めるのはしょうがないか。あとちょっと、という惰眠を貪りたい欲を諦めてもう一度ぐるん、と体を捻って彼の方を向く。朝日差し込む部屋の中で白髪がキラキラしてて、ふわりと優しく笑ってた。
「学校終わったらすぐに予約してた物取りに行くよ?チキンにオマエがどーしてもって言ってたケーキ。でー…、その流れでイルミネーションとか見るんでしょ?」
放課後に車で向かって、商品受け取りして。この時期だから日が落ちるのも早い。クリスマス商戦の中、よりどりみどりのケーキの中で食べたい!と予約したケーキの他に、悟の希望で一緒に作りたい!っていうケーキだってある。それらを逆算して私は頷いた。