第26章 だから師走というんです
「すっごく綺麗だ、ハルカ……、どこかの国のお姫様みたいだね……?僕はこんなにも美しい人をお嫁にしてただなんて。僕は世界で一番の幸せ者だね……改めてキミに惚れちゃうよ」
私の手に重なる悟の手に更に私は手を重ねた。重ねた手の指で感じるのは彼も同じく指輪をしてる。その硬質的な存在感が私達を繋げてる"呪物"、互いに呪い合うような愛し方をしてる。
……ふふ。悟には先に世界で一番を言われちゃった。その一番の座を私は奪おうなんて思わない。
『悟に世界一を取られちゃったか。じゃあ私は悟に次いで世界で二番目に幸せだなあ、なんてね?こんなに格好良い、貴公子みたいな人が旦那さんなんだもん』
目の前でこうも褒めるのはちょっと恥ずかしいな…。より顔に熱が集まる感覚の中、目の前の彼はとびっきりに良い笑顔を見せた。それは触れた相手を、見つめた相手を同じ様にする呪術みたいで、同じく私も釣られて笑う。
「……そっか!ふふっ、ハルカにそう言って貰えて、しかも幸せだって思って貰えて嬉しいよ!
これからももっともっとハルカを幸せにしてあげるからね!」
重ねた手からするりと抜けて、片手が私の手を取って立ち上がらせる悟。互いの衣服が触れ合うほどに至近距離でその蒼眼がこちらを見つめている。
「ねえ、キスしてもいいかな?」
『……唇に私の口紅の色が移っても良いのなら』
「モーマンタイ!だって僕、オマエの色に染まりたいもん!」
にこっ!と無邪気に笑う悟にぎゅっと腰を引き寄せられて、互いにセットしたであろう髪に触れ、唇を重ねて。
例え今はセットで写真を撮るだけだとしても。今日だけは本当に結婚式みたいに、とても幸せな一時を過ごした。