第26章 だから師走というんです
「……あ」
こちらに速攻気が付いた悟、口を半分開き驚いた表情をしてはいるけれど。
その彼がいつも以上に格好良くて目が釘付けになる。あれ、悟って……こんなに整った人だったっけ?ずっとこんな人と私は過ごしていたんだっけ?
ただただ互いに見つめあったままに、その場で凍ったみたいに突っ立ってた。
先に動いた、というか変化があったのは私。パサ、と私の手から滑り落ちるウエディングドレスの裾。それが合図のように悟は手で口元を覆ってその場にしゃがみこんだ。
『悟、』
「……待って、これ夢じゃないよね…?ひょっとして僕、まだベッドの上に居る?すっごいリアルな夢見ちゃってる?」
すす…、と衣擦れの音。少し裾を引き摺って悟の側で私もしゃがむ。少し俯く彼の肩に、レース生地の肘まである手袋を嵌めた左手を乗せた。白いタキシードの上に乗せた私の手はレース生地からしっかりと嵌め込んでるリングが天井からの照明を受けて輝いて見えてる。
『なに、まだ悟寝ぼけてんの?』
「……寝ぼけてんのかな、僕……幸せな夢を見てるみたい。起きてるって思いたいくらいに脳が処理落ちしてる」
俯く顔が上がると至近距離で視線が合って、悟は困った顔をしていた。ほんのりと染まった頬。人のことなんて言えない、わたしだって顔が熱いもの。
そんな困った表情をしても、着飾って少しオールバック気味なヘアスタイルの彼はとっても整っていて。思わずこの人に心底惚れてしまってるんだな、と笑うと肩に乗せた手にそっと手が重ねられて悟はふっ、と笑う。