第26章 だから師走というんです
着いた目的地。写真を撮るためにセットが色々と揃ってる大きな施設の駐車場に停車して。本格的を求めるなら本物の教会だとかテーマパークに行けば良いんだけれど…。
カション、とシートベルトをさっさと外した悟は元気な子供の如く、運転席から飛び出した。
えっ、超元気すぎじゃね?私がシートベルトを外しマフラーを整えた所で運転席から前方、助手席ドア前まで早足で移動してきた悟。外側からドアを開けてくれた。
暖房の効いた車内から暖気が消え、代わりに冷たい外気が吹き込んでくる。さっみ!
「さ、行こ行こっ!」
席を立つ前の私の腕を引っ張る悟。
アレだ、散歩散歩!なワンコだ…。
『わ、ちょっと引っ張りすぎだって!ステイ!ステイ!』
「待てないっ!夜まで待てない!」
『ベルモンド一族か??』
追われるものは何もなく、時間についても遅刻気味な悟にしては早めの到着。手をぐいぐいと引かれて入り口でお辞儀をするスタッフがにこにこと微笑みながら「ご予約された五条様で宜しいでしょうか?」と予約の確認後に館内の案内をしてくれる。
一度施設内を悟と一緒にぐるりと回っていろんなセットを見て回って。ネットカタログでも見たけれど、撮りたい場所を実際に見てからふたりして改めて決めた。
身軽な状態で決め終わって、次はいよいよ以前決めた服…、私はドレス悟はタキシードにそれぞれの個室で着替える事になる。
……というわけでそれぞれ別室で着替えるから、個室に入る前、通路で悟と最後に言葉を交わしてる。
スタッフは既に左右の個室で待機していて、通路には私と彼のふたりっきり。悟は少し落ち着いた様子でにこ、と柔らかく笑っていた。
「これから着替えだねえ……僕、花嫁姿のキミを見て泣く自信あるズェッ!」
それは自信持って言える事か?と思いながら苦笑いをして。
目の前の微笑むGLGがその整った表情を崩し涙を流す悟の様子が容易にも想像が出来るなあ。そんな泣き顔の悟を想像しては苦笑いも出るよねえ。
……まだ見ぬ彼の衣装・それから緩い表情筋もシャキッとした悟を考えれば、あの呪術師の交流会のドレスコードの悟の時の自分を思い出せば、この後の私がやる行動なんてすぐに思いついた。
私の花嫁衣装で泣く自信を持つ彼に対抗して、私は携帯で連写という攻撃をするわ。