第26章 だから師走というんです
虎杖の言葉にぐるん、と首を回しながらカチャ、と音を立ててシートベルトを締めた悟。頬をぷく、と膨らませて。
「先生はバックレません!キミ達がちゃんと任務をやり遂げるのを見届けてから最速で済ませてくるよ」
「えー?見てから行くより任務に行ったほうが効率良くない?」
「効率とかじゃなくて単純に見学。見てても良いでしょ?キミ達の実力チェック、担任としてたまにはしないとねー?」
「けんがくぅ?」と虎杖が首を傾げた所で伊地知が車を目的地へと車を出発させる。もう悟は降りないな、と察したっぽい。ふざけてって感じでもなく本気のようだし…。
ルームミラー越しに後部座席の私達を覗く伊地知は運転しながらふふ、と笑ってる。
「虎杖君、五条さんはハルカさんが心配なだけなんですよ」
「遠回しに言ったのに正解言っちゃうとか伊地知、後で校舎裏ね?」
「えっ……校舎裏、ですか……すみません、余計な事口にしました、さっきの発言は聞かなかった事にして下さい、忘れて下さいね?おふたり共」
「そっかー!忘れたって事にする!」と納得する虎杖。伊地知の悲しそうな表情がふっ…と口元だけ笑った、未だに悲しそうな顔がルームミラー越しに見える……。
そういう心配で任務中に特別扱いをしないで、なんて私からは当然言えなくて。私と虎杖での任務に一緒に着いて来る事に否定の言葉なんて言えず、ただ黙って私は悟の同行を受け入れた。