第26章 だから師走というんです
「ごほん……恵と野薔薇は新田の車、悠仁とハルカは伊地知の車ね。それぞれ行き先が違うんだけどどっちも任務場所としては廃ビルだよ、ビルっていっても"元"ホテルなんだけど。
クリスマス肝試しだとかで毎年被害出てんだよねー、虱潰しに他の呪術師もやってるんだけどキミ達もその作業をしてもらいます、って事でまあ…年末の大掃除って事で!」
にぱっ!ととても良い笑顔で「お掃除頑張ってこー!おー!」と言う悟。肩に片手を乗せられた虎杖も「おー!」と悟に合わせてノッてる。寒空の下、そんな元気なふたりを見て上げきれぬテンションの私と野薔薇と伏黒。伏黒はただ、はあー…と重い溜息を吐いてる。
「私、あんなに馬鹿みたいにテンション上げられないわぁ~…」
『無理にテンション上げなくて良いでしょ、先生に合わせたらハッキョーセットのノリでも追いつかないよ』
「えー?元気な事は良いじゃん。元気と現金があれば何でも出来るってプロレスラーの猪木も言ってたしぃ~」
『……アントキの猪木?アントニオの方は現金についてはノータッチやぞ??』
……悟からの説明は二手に分かれる事と場所について、それから目的についてだけ。後は運転をしてる新田や伊地知が説明してくれる、と言うので早速私達は車に乗ろうと、エンジンを掛けて私達が乗り込むのを待つ後部座席を開け、運転席に居る伊地知に『運転宜しくお願いしまーす』と声を掛けた時だった。
にこ、と笑う伊地知が途端に真顔になる。片手で眼鏡を掛け直してドアを開けた私達を見ていた。
「……えっ、五条さんも行くんです?」
『えっ』
横を見れば丁度助手席のドアを開ける悟。そして私の開けたドアの反対側から虎杖がドアを開けて乗り込む。「伊地知さん運転オナシャース」って元気に声を掛けて。
そのふたりが乗り込んだのを見て、私も遅れて車に乗り込んだ。伊地知がまさかのゲストである助手席の悟をガン見してる…。
『さ……、ううん。先生も行くの?特級呪術師の任務は?サボタージュです?』
「えっなに先生、任務バックレんの?」