第26章 だから師走というんです
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週が明け、課外授業の日になった。
天気は気持ちの良い晴天ではなく、曇天。そのグレーの上空からは雪がゆっくりと降りてきている。東京での積雪はまだ早く、車庫に向かう途中の地べたに触れては消えていく雪をさっきから何度も見ている。
寒いのは苦手、寒さ対策にしっかりと保温性のあるインナーを腰まで下げてお腹を覆うようにしてきてる。また、首元には悟が使っていたグレーのマフラー。以前私が買ったのは悟用としてだったし、私用のを買ってなかったと彼が知ると出掛ける時に悟にぐるぐると首元を巻かれて。結局、悟が使っていたものが私へと、マフラーのトレードという形に収まってる。
……悟が使ってたマフラー、めちゃくちゃ柔らかくて暖かい。もしかしたらというか、やっぱり高いやつ使ってるんだなあ…。実家にある私のマフラーなんて毛糸で荒く編んだやつだってのにさ!
……もう、前のマフラーには戻れなくなりそう。良いものを使ってグレードダウンしたかつての私物がなんだったんだアレ?ってなってる今シーズンだよ。
で、集合場所へ向かっている、私の隣…並んで歩く悟の首には私が彼にプレゼントした濃紺の…、近くでじっくり見ると雑な刺繍入りのマフラーがしっかりと彼の首元を覆うように巻かれている。目元にはアイマスクだからここに口と鼻を覆うマスクをしたら、上下黒尽くめの服装も含めて殆どの情報を隠した"不審者"になるわ……。ウン、私の悟への第一印象そのものだわな。
そう懐かしいあの出会った頃を思いながら、悟を見上げた。
彼はいつからなのか、私をじっと見てにこにこと口元に笑みを浮かべている。
「今週だねえ~…写真にクリスマスに忘年会!イベント盛りだくさん!ついでに僕の仕事も盛りだくさん!仕事はイヤなんだけど…っ!
あ~…今年は奥さんが居て良かった~!寂しい時も辛い時もハルカが一緒ならどんなに忙しくても生きていけるよ、僕」
寒いからってポケットに入れてたであろう手で私の肩をぱん、と叩く。そのまま肩に手を置かれると彼の掌から伝わる体温、ゆっくりと肩が暖かくなってくる。
ハロウィンの事もあるからね、忙しいんだって分かるよ。