第25章 気分はホワイト、時々ブルー
242.
「喧嘩もほどほどにな~!」
『うん、迷惑かけた!』
玄関を出て、玄関の上の屋根よりも内側に吹き込んで僅かに積もった雪を踏んだ。ぎゅむ、と約一年ぶりの雪の感触を靴底に感じる。
敷地内の雑草やらタイルの上には昨晩に降った雪が積り、僅かながら白銀の領域を作っていた。
泊まった翌日の朝……いや、今。私が乗ってきた車で悟とふたり実家から出ようって時に掛けられた父の言葉は優しく、少し悲しそうにも感じた。それは久しぶりの賑やかさが再びひとりになるからかもしれないし、私が喧嘩をしたからという理由で母を思い出したからかもしれない。
どちらにしろ、私が多くの時間を過ごしたみたらい家。この家には死んだ母は二度と帰らず、兄は遠くの土地で暮らし、私は悟と一緒になった。私達はそれぞれ大切な人と居るけれど父は実家でひとりぼっち。
……だから。
『これからは喧嘩以外にも顔を見せに帰るよ。悟と一緒にさ!』
「そーね、僕もハルカとあまり喧嘩はしたくないから、お義父さんに心配掛けないように僕らの仲良しなトコロを見せに来るよ?」
にっ!と笑えば、父は寂しそうな表情を柔らかくした。
……厳つい顔つきは変わらないんだけれど。
私の隣に立つのは白銀の髪を持つ男。昨晩のうちに洗濯を済ませ、一晩乾燥をした服を着ている悟は、父の前で私の肩に手を置いて身を寄せる。
昨日私を追いかけてきた上下黒のいつもの服装は少し寒そうに見えるけど、昨日揉めた例のマフラーを首元にしっかりと巻いて見ていてて首元だけはあったかそう。私の頬に触れたマフラーは柔らかく、すぐにそこからぽかぽかと温めてくれる。ある意味、寮を飛び出した時に渡してたのがこれで良かった…と再確認した。
密着してる私達を見た父は少し嬉しそうに、空元気ではない笑顔を見せる。
「……じゃあ、孫にでも期待でもしてっか!」
「うん!今、すっげえ頑張ってるから!」
『さ・と・る!』