第25章 気分はホワイト、時々ブルー
携帯を取り出して親指でさくさくとなにか操作してる悟。操作しながらに「そうなんだよ~、パパリン」と画面に集中してる。
似合わぬあだ名を父に付けるな、いかつい顔が調子に乗ってちょっとニヤけてるじゃん。
携帯を見つつ、青い視線が時々こちらを向いている。
「家の都合上、式を挙げるにもやっぱ禪院家がねえ~…。
もちろん高専に通ってる生徒達は問題なく僕とハルカの結婚に異論は無いんだけどね?現当主の禪院直毘人……まあ、直毘人は悪くない反応だとして問題がその取り巻きだねえ…禪院家全員が、あ、ギャグじゃないよ?全員が反対派なんだってサ!加茂家は賛成してるから本当あと少しなんだよ。
それで、と……」
操作を終え、机の上に置かれる携帯。画面には華やかな衣装のサムネイルが並んでいるのが見える。私と同じく父も悟の携帯を覗き込んでいた。
「……お義父さんも居るしちょうど良いからこの場である程度決めちゃおうか!お義兄さんが居ないのは残念だけどっ」
ばちんとウインクした悟。
「一生モノだしな、一番似合うやつ決めてそれでしっかり撮れよ!んで、絶対に俺やタイガに写真を送れ!」
「モチのロン、でもまあ、ハルカにはなんだって似合うよね~」
覗き込む悟の携帯画面。装飾の細かい、いろんな種類にカラーバリエーションのあるドレスが何スクロール分もある。
『うわ、すっごい種類、これ今決まる?』
「財力で全種類の写真を撮るって選択肢もあるよ?」
『それは流石にしないわ……』
「あっはっはっは!」
久しぶりの急な里帰りではあるけれど夜でありながらわいわいと賑やかに更けていく。
こうして寝る時間になって、兄の過ごした部屋ではなく私の寝室に悟が来ることになってしまった。かつて、私の部屋に来ようとして必死に止めた、それ以来の階段先への招待。
暖房で暖かい部屋。高専よりも少し小さめなベッドの上でふたり並んで横になってる。電気は消し遮光性の低く外の積雪を反射する外灯や月明かりで、カーテン生地から透けてる明かりで部屋は照らされていた。
「今日する事はやったし、あとは…」
『あとは?』
にこりと笑う悟が私の腕をがしっ!と掴み引き寄せてる。この時点で嫌な予感しかしない。