第25章 気分はホワイト、時々ブルー
薄情な男。他の人からはどうか知らないけれど…私にはそうは見えない。猪野から聞いた必死な悟の様子だって聞いてるんだ、目の前の優しい表情の彼は私を死んでも本気で離さない人だって充分に知ってた。絶対に死んだ事さえも認めないで諦めずに蘇らそうってする人……私がこうやって些細な事で実家に帰ろうとも、拒絶されようともこの人はそれくらいで諦めるはずがない。
──今回のサプライズ用に隠してたものを無理やり見るような、嫌だと言うことを強引にする所は嫌い。
けれども、ここまでずっと追ってきて体温が氷みたいに冷えるまでずっと待ち続ける悟は嫌いじゃない。
じわ、と視界の悟が滲む。瞬きすれば流れていく。重ねられてた手が離れ、頬の涙を悟は指先で拭って少し悲しそうに笑った。
「また泣かせちゃったな……最低だね、僕。……ごめん、ごめんね、ハルカ」
ぴた、と再び重ねられた手は指先が濡れていた。
いつも自画自賛の悟がちょっと弱気に、自分を"最低"だなんていうなんて。少し私は笑って『最低なんかじゃ、ないでしょ』とその悟の最低を否定しておいた。
『許してあげる。だから最低なんて言わないで。追いかけてきてくれて諦めない悟は最低なんかじゃないでしょ……。
でも、もう体を壊すようなこういう無茶な事は本気で止めてよ?』
「うーん……、それは約束は出来かねないかな。キミがヤンチャしたら同じことしちゃうかもね…?でもまあ努力はするよ?そ・れ・な・り・に、ね?」
頬を挟む私の手は悟の冷たさが移ってすっかり冷えてる。
苦笑いをした後に彼の頬から手を離してぎゅう、と彼の背に腕を回し、しっかりと抱きついた。
触れていた手のように、体の前面や背に回された手から私の熱が奪われていく。冷えても良いと、温まったばかりの体から悟へと熱を提供し続けた。
「ハルカ、あったかい……すっごく、あったかいね…」
『悟は冷たいね、風邪引かないように温まりなよ』
私で暖を取るよりも室内の暖房や、温かい飲み物の方が手っ取り早いとは思うんだけれどね。彼の求めるがままにきつく抱かれる。