第25章 気分はホワイト、時々ブルー
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まだ家の中だというのに玄関ですら寒い。ドア一枚先は外、きっとうっすら積もった銀の世界。スリッパから素足で靴に足を入れると靴底も冷たくて自身の体を抱いて震えた。
『っふー…さっむ!』
絶対にこれは雪が積もり始めてる。明日は高専に戻る時、運転注意しよう。ああ、写真撮るのに部屋から携帯持ってくれば良かったな、悟の通知が多いからってずっと鞄に突っ込んだままだった。
鍵を開け、そっとドアを開けたなら、空からは少し大きめな雪の塊が無数に落ちてきて下へと辿り着いては粉砂糖のようにふわっと消えて、溶け残った一部が少しずつ地面を白く染めていく。
その視界の中、ドアのすぐ側。
足元に雪と同じ白の頭髪の男が座り込んでいた。その人物はこっちを振り向き、見上げ、裸眼の青が私を捉えてる。大きく見開いた眼がふたつ、私の視線とばっちり合った。
『(……あ)』
なんだ…高専に帰って無かったんだ。
追うな、帰れと彼を拒絶したのにここに居るという、嫌がることをしているのだけれど、どうしてか嬉しいって思っちゃった。
でもここまで拒絶して、明日帰ると言った手前喜んでいられない。思わず引っ込んでドアをそっと閉めようとした瞬間に視線の下にしゃがんでた彼は立ち上がり、締まりそうなドアをこじ開け、玄関にと引っ込む私に押し込みながら悟も入ってくる。
『な、なんで…、』
押して拒絶しようにも、その私の手を躱し手首を掴まれて。悟に引き寄せられるように、倒れ込むようにバランスを崩す体。
バタバタと揉めるような、私と悟の靴の音。靴裏の砂粒が玄関でジャリジャリと不快な音を立て、バタン、と閉まる玄関のドアの音。
私はぎゅうう、と抵抗したとしても離れられないくらいに、しっかりと冷たい体の悟に抱きしめられた。
『さ、悟帰ったんじゃあ…』
「帰るワケ、ねえだろ……っ」
いつもなら暖かく包み込むのに、今の彼は服からしてかなり冷えている。追いかけてきた時のまま、コートなどは着て無くてただ私が買って隠してたマフラーだけ首に巻いていた。少し震えてるのがマフラーだけじゃ防寒にはなってないって証明してる。もぞ、と彼に抱きしめられた中で見上げた。
もたげた頭がこっちを向き、私は両手で悟の頬に触れる。素手で触れた悟の頬は氷みたいに冷たくて驚いて目を見開いてしまった。