第25章 気分はホワイト、時々ブルー
三度目、四度目、五度目とチャイムが鳴る。チャイムが聴こえないのか?と思ったのか玄関をゴンゴンとノックしてる音も聞こえる。
自然と私の口から、今回の経緯が父へと漏れ出していった。
ちょうど父は口に火が通って白っぽくなった肉をたれに着けて口に運んだ所だった。
『……訳合ってさ、少し前に悟の誕生日にケーキ作るって約束してそれが出来なかった事があって。だから今度はクリスマスに……ケーキは一緒に作るのはもちろんだけどさ、それとは別のサプライズプレセントを用意しようって思ってたの』
もぐもぐと口を動かし、黙って静かに耳を傾けてる父。鍋はとっくに煮えてる。いつの間にかテレビは消されて鍋のぽこぽこという煮立つ音だけがBGMになってた。
『やっと今日、プレゼントが出来たんだー…、完全手作りじゃないんだけれどね、マフラーに刺繍を頑張ってみたわけ、見つからないように隠れて何日もかけて。それを隠してたのに、隠した場所をわざわざ確認して、中身を見ようとされて…止めてって言ったのに無理やり見られて……』
きっと子供みたいな喧嘩だろうって思われてる。それでも。
『そんな事でって思うかもしれないけれどさ。せっかく喜んでくれるかなって思ったものが台無しになったんだよ。出来上がって数分もしないうちに。
今回、これを私が許したとして、これから先もずっと私が嫌だ、止めてって言った事をされるのを私はずっと許し続けないといけなくなる。隠し事っていうのは全部が全部、やましいものなんかじゃないんだよ…本当に、彼に喜んで貰いたかっただけだった、そんな隠し事だったのに……』
ぽろ、と頬を転がるように大粒の涙が流れていった。
「……そっか。そういう理由で今回、お前は帰って来たんだな」
酒の入った父はわしわしと豪快に撫でる。大きな声でがはは、と笑って。