第25章 気分はホワイト、時々ブルー
にか!と笑った父はしゃぶしゃぶ肉を二、三枚ほど重なった状態でずぼっ!と煮え立つ鍋に突っ込む。こら、なにやってんの!
じっとその行動を見てれば父は「母ちゃんみたいな目で見るなよ……」と少し縮こまってて。
『……そんなモンかなあ…?』
「そういうモンだ。後になってあんな事もあったな~って、振り返る思い出にもなるし、更にお前達が大事になった!だからきっと、お前も悟君を、悟君もお前を大事だって思えるぞー?」
はは、と苦笑いしていると、ピンポーンと家のチャイムが鳴る。この実家は基本父だけが住んでるのだし、私が来たのは予想外。だから本来こんな時間に父に来客なんて無いようなもので。
席を立ち掛けた父に私は片手で制止した。だったら多分、私の来客だ。
『……いい、出なくて。きっと悟だよ。悟には私、週明けには帰るって行ってあるし、今は会うつもりない』
二度目のチャイム。父は私から玄関方面をじっと見てる。確実に悟なんだって分かってる。そういう人なんだって知ってるから。
父は私を見て苦笑いしつつ席に腰を落ち着かせた。
「本当にいいのか?」
『うん、いいの。出ない、このまま彼には帰ってもらう』
「……母ちゃんに似て強情だなあ、」
『娘だもん、似るのはしょうがないよ。追ってきてる人には諦めて貰うから…』
携帯を鞄に入れていたから、ふと携帯が気になって鞄から取り出す。メッセージやものすごい件数の着信履歴が入っていて、画面を見ているうちにまた着信が入ってる。
『……』
すぐに着信拒否をして、LINEから一言を送る。"帰って、今は会うつもりはない"とだけ。
飛び出す前に嫌なことは嫌だと言ってるのを強引にするのは好きじゃないって言ってあるから、それが理解出来てるなら大人しく帰ってくれるはず。
鞄にぽい、と突っ込むと同時に鞄の中でブブブ、と震えてるのが聞こえる。今はそんな気分じゃなくて、椅子に座った。父は心配そうな顔でこっちを見てる。
「……いいのか?」
精一杯に空元気で笑って、心配する父をなんとか少しでも安心させようとしてみるけれど。
『うん。嫌な事は嫌っていって、それを強引に事進める人は好きじゃないって言ってある。むやみなしつこさは私は嫌い。今日はもう諦めて帰って貰う』