第25章 気分はホワイト、時々ブルー
腕まくりをする悟は洗面所へと向かってる。
あれ、あっさり引いたな…?とまだ衣装ケース前から離れられない私。離れながらに悟は私に話しかけ続けていた。
「そういえばさー、結婚式挙げるの来年になってからだけどせめて今年中には何か残したいじゃん?つーことで先に前撮りで写真撮りたいって僕は考えてるんだけど」
『大事な話は異空間じゃなく面と向かって言え~?』
めちゃくちゃ大事な話やんけ。洗面所に向かうとうがいまで終えた悟がタオルで口元と手を拭き、アイマスクを首元まで下げた。
そしてにっこにこに笑って首を傾けて。
「急ぎになっちゃうけどね、前撮りのお店に23日に予約入れちゃったから速攻ハルカの着るドレスを選んでねっ!」
『かなりハードスケジュールじゃない!?』
私が急過ぎる展開に驚いていれば彼は余裕そうにははっ!と笑ってる。
「ハードって言ってもそんなにハードじゃないさ。前撮りのは既製品だよ、レンタル。本番である式の時のは白無垢もドレスもオーダーメイドだけど。
カタログはネットにあるから今日一緒に見て、明日店舗に試着しに行くよー」
『いや……ハードじゃねえか…』
洗面所からキッチンへ、と話しながら一緒に歩いていたのにフッ、と隣の悟が消える。悟の霊圧…いや、呪力が消えた…?じゃなくて。振り返れば衣装ケース前。なんでそこに移動してんの……?
諦めたとばかり思ってて、油断してたから衣装ケースを開けようとしてる悟の元に数歩、急ぐ。
なんで、こういう時にしつこさが増してんの!?
『あっ!こら駄目っつってんでしょうがっ!』
「へへっ、油断禁物~やりぃ!」
いかにも悪ガキスマイルで衣装ケースを開ける。素早く奥に突っ込んだ、中身の見えない袋にガサ、と手を伸ばしてる悟。青いその瞳が「見つけた!」って言葉を発してるみたいに細められて。
クリスマスまで保たせるつもりのプレゼント、隠し通すつもりのサプライズがここで開封されたらどうすんの!?ラッピングも出来てないのに!
今なら間に合う。幸いにもマフラーを入れた袋は透明じゃなくて中身が見えない、洋服店のビニール袋だった。