第24章 ハロー、ニューワールド
恥ずかしい事をさらりと再現する猪野に口から言葉が出ない。
なんていうか、本気でそんなに蘇生を諦めずに助けてくれていただなんて。損得を考え、悟に負担を掛けるなら私をあの時見殺してくれれば…とまで私は思っていたのに。
きゅう、と締め付けられるような胸。今は皆と任務に行ってる悟への罪悪感と好きって気持ちが止まらない高揚感。言葉も出ないのに照れて緩んでしまいそうな口元を片手で隠して。
着替え終えた猪野がにこにことしながら、私の対応をじっと待ってるので、バインダーに挟んだ紙に名前などを書かせようと彼に向ける。受け取った猪野はさらさらとペンを走らせていた。
そんな回復前と変わらない元気そうな猪野を見ていた七海が「ハルカさん、」と名前を呼んだので猪野から七海を見上げた。
「……もう少し経ちましたら快気祝いに家入さんも誘って飲みにでも行きましょう。今は繁忙期もありすぐには無理ですが」
『はい…皆さんにまたもや迷惑掛けたんで私から奢りますよ……』
ここまで皆の足を引っ張る呪術師って居ないんじゃね?ってくらいに問題を起こしまくってる私。知っている中で一番真面目かつまともで頼れる七海には嫌われたくはない…。
「何をおっしゃいます、あれは呪霊による攻撃です、特にハルカさんに非は無いとは私は思いますが……」
名前を書き終え、状況についてを書いてる途中の猪野がばっ!と顔を上げて七海と私を驚いた顔で交互に見る。
「えっ七海サンとハルカサン良く飲みに行くんですか!?」
「まあ、そこそこに」
『ふたりきりって事は無いですけど、大体家入さんを追加しての三人で。たまに鼓膜に負荷を掛けてくる下戸も』
多分、どっかで悟くしゃみしてるんじゃないかな?
私と七海を交互に顔を見る猪野。七海が「そういえばハルカさん、」と呼びかけてきたので私は猪野から七海を見上げる。