第24章 ハロー、ニューワールド
「京都で俺が見た時は確認をせずに治して回ってましたけど」
「ああいう大規模な時は数が問題です、まず人体組織の治療を優先、もしも呪いがあれば対策チームが解呪を行いますからね」
「ほー…なるほど!」
教師と教え子というか先輩後輩というか。明らかに七海を慕ってる猪野を見ながら、バインダーに挟んだ紙に少し書き込んでいく。内出血で皮膚の色が変色してる、それから触って痛そうにしてるから丸を人体図に書き込んで…。
それが終わったら猪野の二の腕に片手で触れて手を離す、もうこれで治ったはずだし。
『はい、終わりましたよ。で、猪野さん?京都の時居ましたっけ?』
私の記憶には無い。というか多分怪我をしてないから会ってないって事。
ちょっと悲しげな表情の後に「あ、そっか」とひとり納得した彼は、脱いだ服を着始めるタイミングでブルーヒーターが着き始めた。生ぬるい風を吐き、温かな風を一定の間隔で吐き出し始めるブルーヒーター。
「呪いの討伐に先に出てたし、怪我しなかったから直接は会ってないんですよ、俺達!実際、京都で見かけた時は既にハルカサンはシートが掛けられた、亡くなった状態でした。そっから五条サンが熱烈に心肺蘇生ずーっとやってましたから」
『うわ、うわうわうわ、それ猪野さん見てたんです!?』
まじか。
ぎゅうう、とバインダーの端を掴む。猪野はキリッ!と表情を変えてウンウン頷いてた。
「もうホント凄かったですよ、胸元とか素肌の部分は気を使ってタオルで隠してましたけど、心臓マッサージガンガンにやって、マウストゥーマウスで人工呼吸、からのAEDって感じでずっと蘇生をやってましたし」
「猪野さん」
「いやあ、ホント凄かったっすよ、五条サン。二時間くらい心肺蘇生してたんですけど、"僕が倒れるまで、ハルカにずっと心肺蘇生は繰り返すから。僕はこう見えても独占欲の高い男だからね、まだ神様にはこの子を差し出すつもりはないの"
……とか"僕、最強だから。神サマにはなれなくてもね、なんだって出来るんだよ?絶対にキミを助けるって何度も言ってるし。きっと、きっとハルカを生き返らせるからね"……とか言って!
ヒューッ!さっすが五条サン、男~って感じですね」
『……(言葉が出ねえ)』