第24章 ハロー、ニューワールド
携帯をしまって走る。怪我したのに元気だな、普通そこまで元気じゃないとは思うけれど……。
医務室まで走っていくとふたりの影。ひとりは良く知ってる七海。そのもうひとりはリベルタの地下や交流パーティーでも見かけている人。あの人が猪野かな…?ふたりの側に行けばペコ、と軽く頭を下げあった。
「お久しぶりです、ハルカさん。一昨日目が覚めたという割に普段通りに元気そうで」
『七海さん!』
昨日の内に目が覚めました、と連絡はしてある。それ以降直接会うのは今だけれど。
医務室の鍵を開けながら、七海と猪野を見る。七海は怪我が無さそうで…付き添い、かな?猪野がきらきらした目で七海を見てるのはなんだ?
ドアを開け、『どうぞ、』とふたりを中に入れて。
ずっと居るわけじゃないから暖房は効いてない。ブルーヒーターのスイッチを押して椅子に猪野を座らせた。
『で、七海さんは猪野さんの付き添いで?』
「ええ、任務先が一緒で彼が怪我を負ったという事で。彼にしては大きな怪我なので連れてきました」
「ここ何ヶ月も怪我はしなかったんですけどね!」
怪我もしなけりゃそりゃあ顔合わせはしないわな、と引き出しから用紙を取り出し、机に置いて『ちょっと診ます』と服を捲ってもらう。
彼は私を見上げつつ服をめくり、上半身裸になった。寒さでちょっと寒イボが立ってる。
「ハルカサンって確か触れるだけで治療出来るんですよね?わざわざ場所見る必要ってあるんですか?」
単純な疑問に私が答えるよりも先に、側に立っていた七海が怪我をした猪野の事を見ながらに答えてくれていた。
「確かにハルカさんは触れた相手の"負"を吸い取って治します。ただしそれは怪我や病に限っての事。
人体組織外の異物や、掛けられた呪いなどには適用しませんからそれの確認なんでしょう、始めの頃に家入さんに何度か言われている時見ていますしね」
あー…割と最初の頃にそんなシーンを七海にも見られていたかもしれない。ちょいちょい指導入ってたんだよなあ、と懐かしみながらも用紙を机から拾い上げたバインダーに挟む。
えっと、後はペン…ペン……。