第24章 ハロー、ニューワールド
にたぁ…と企てる笑みの彼を見てぶんぶんと拒絶をしておいて。
こうも雑談をしながらだと街まではあっという間。静かな高専から賑やかな場所へと繰り出し車を停車させた後は、寒いからと人混みも気にせずにしっかりと手を繋いでいた。
時折女の子が「今の人~…」って悟の容姿に目を奪われてる。ただ、しっかりと私と手を繋いでるし、彼自身が私をじっと見ているから声を掛けられる事はないので、あの付き合ったばかりの時みたいな女の子に話しかけられる悟を見ることが無く、精神的にも安心だった。
……それにしても時期が時期。今は年末、しかも冬の一大イベントのクリスマスを間近にしてる十二月。街中は大人も子供も浮かれる賑やかな装い、クリスマスのディスプレイが目立つ。
もみの木じゃなくてもぐるぐるとカラフルなLEDを巻きつけられたイルミネーションがチカチカと賑やかで。雪だるまのバルーン、サンタクロースの人形、トナカイの形の青白いイルミネーション。マネキンが男女のサンタ衣装を着せられてたりしてる。ハロウインとなんら変わりないんだよねえ、こういうイベントって。となれば呪術師も忙しそうだな……だから私が目覚めた時、あんなにも悟は疲れ果ててたのかもね。
『……クリスマスかー、』
今年のハロウィンなんて無かった、状態の私にはやって来るクリスマスが近く感じる。あんなに領域内での時間が長く感じたというのにあれは長い夢であった、と頭が処理してんのかあの死んだ間の出来事を頭も体も無かった様にしたいのかもしれない。
暖かく包み込む大きな手の悟はぷらぷらと繋いだ手を揺らした。
「ん、クリスマス二週間程先にあるよね。今日、ついでにチキン予約する?ケーキはオマエの手作りでオッケー?」
『両方予約じゃない?ケーキはさ、今から作るの練習しても小学生の作るケーキ程度にしかならないよ、今年は美味しいプロのケーキ食べようよ』
手作りは来年だ来年、今年は美味しいものにありつきたい。
この時期のケーキの商戦はえげつないんだからなかなか食べられないケーキを食べるチャンスでもあるのだし。
口を尖らせてる悟を見上げて笑った。どうやらお店のケーキは不満らしい。
『えっなに、悟期待してたの?』
「……見た目じゃないもん、愛情が詰まってるでしょ?僕の主食はハルカからの愛だよ?新婚の僕らの初めてのクリスマス、記念になるじゃん?」