第24章 ハロー、ニューワールド
その私の視界に左右から手がぬっ、と差し出されて左右を確認するように見た。右に野薔薇、左に伏黒。
「ん、」
「回復。俺は乙骨先輩に投げられた時の。釘崎は狗巻先輩にだな」
『あー…はいはい、はい終わり』
一気にその片手を掴み、些細な擦り傷を治して。確か、虎杖はパンダとやりあってたハズだ、と伏黒の隣に座る虎杖を見た。
『あれ、虎杖は?』
「ん?俺はダイジョブ。怪我、ナッシング」
『パンダ先輩相手でー?結構ヤムチャ視点で打ち込み合ってなかった?オラオラ無駄無駄やりあってたよね?』
同じ近距離で純粋に打ち込みあってた。怪我が無いとか互いに技術を高め合う体術で最適な行動をしてるって事だよ。
にっ!と笑う虎杖に伏黒が虎杖を指差して、呆れながらに口を開く。
「宿儺の気分次第で治すしな、コイツ」
「ああ、でもコイツ相当機嫌良くねえと治さないんだよ、だから俺自身期待してねえんだけど」
ふんす、と鼻息を荒げる虎杖から寒さによってSL機関車の様に蒸気が吹く。ずっと座ってるのは寒いから皆体を縮こませて話をしていた。
宿儺が虎杖に憑依した状態は見たことがない。けれども頬や手のひらに目や口が現れているのは数度見たことがある。ちょっと愉快な体になってるみたいだ。
一度掌から口が出来ている時に『デイダラみたい。粘土食うの?』と虎杖に聞いたら、宿儺に「何故土を喰わねばならん、口を慎め小娘が」と罵られた事もあったっけか。
そんな事を虎杖の手を見て思い出しながら、虎杖の顔に視線を移して口を尖らせる。
『えー自分の中の宿儺をちょっとは期待してやんなよ、じゃないと期待に答えてくんないよー?今度サラミ食わせてあげるからさー』
「期待出来るかよ、先生みたいに餌付けでなんとかなるワケじゃないし、こいつ……」
「先生がイージーモードなだけよ、しかもハルカのみチートモード」