第24章 ハロー、ニューワールド
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しつけ糸を取ったばかりの真新しい制服を着て身嗜みを玄関前で整える。悟も手にアイマスクを持ってる。彼はそれを着けたら準備万端って事で。
『朝から結構食べたなー』
久しぶりに食べて満足、ただ胃が小さくなったのか通常なら食べられた量が入らなかった。私がシャワーを浴びている時に悟がほぼ作ってた夕食だったもの。出来たてを食べる事は叶わなかったけれど、温め直した今朝食べたら凄く美味しかった。
……記憶を封じ込めようとしてた、血を混ぜたものは悟に食べられていたけれど。悟に取り込まれたからといって私は今更、私と彼との思い出を封じ込めるつもりはなく、また彼も信用してくれているからこっそりとミネストローネの入ったカップをチェンジしたんだと思う……。
「そんなに食べてないように見えたけど?もっとしっかり食べなよ、体が軽くなってんじゃん」
ウエストポーチを取り付けてる私に、アイマスクを指先でくるくると回してる彼が文句有りげに言ってくる。
医務室から運ぶ時の事かな?と彼を見上げたらにや、と笑う悟はアイマスクを自身の頭部から被ろうとしながら、それとは違う意味での重量についてを文句言ってきた。
「あんまオマエが軽いとえっちの時の一突きで月まで吹っ飛んじゃうでしょー」
『バッファローみたいなセックスをすんな。なに、月までって。月と突きを掛けてんの?』
ケタケタ笑う悟はズボ、と首元までアイマスクを被った。
……食事に満足する私に対しての彼は同じく夕食を食べていなかったとはいえ、同じタイミングで食べた今朝の食事。その時に食が細くなってたようにも見えて……私よりも食べてない気がする。
多分互いに残した分は帰ってきてから食べる事になりそうですねえ…。
そんな彼の様子を見るになんとなくだけどここ最近の悟の食生活は偏ってたな…と推測が出来た。眠ったままの私の側に居て見守る事ももちろん(このまま眠り続けて居たら、上層部に強制的に呪物のように扱われていたかも、と聞いた)出張・任務で忙しかったらしい。食事も睡眠も満足出来ない日々じゃあ身体も壊しちゃうよ…。
私が目覚めた事でその負担を少しでも減らせたならば良いけれど……そう、彼を想いながら寮を出る状態の彼は目元を隠し、口元に笑みを浮かべて私の準備を待っている。