第24章 ハロー、ニューワールド
力いっぱいに抱きつかれてすりすりすりすりと摺り付いてる。いつもの悟のこの懐かしさに胸がいっぱいになりながら頭を撫でた。
ふわふわして、乾いてないままに寝たから始めこそは寝癖がヤバめだったけど撫でる内に寝癖知らずとなる。なにこれ羨ましい。
頭から頬へとするりと撫でて移動した手。すりつく悟は顔を見せると今にも泣きそうな瞳でこちらを見てた。
『嫌いじゃないよ、私は悟が大好きだよ?』
「本当…?ハルカは僕の事、大好き以上に愛してくれてる?僕はハルカを愛してるよ」
『ん、私も悟を愛してるよ』
そう言えば、悟はふわ、と笑って「そっか!」と満足げに再びすりすりと首元に頬擦りを始める。
添え木から離れないカブトムシが如くがっちりしがみつく悟。ずっとこうして甘い時間を過ごすのも良いけれど、私が死んだと思って過ごしていた領域内とは違い、ここには正常に流れていく時間ってものがある。
ゆっくり離そうとすると抵抗するようにより強く抱きつく悟。
「やだっ!離そうとしないで!」
『朝だっちゅーねん、さっさと起きる!私はお腹減ってんの、昨日夕ご飯食べる前からどっかの誰かさんが大ハッスルしたおかげで食いっぱぐれてんのっ!』
「やーーーっ!
……ククッ、懐かしいねえ~、いつもの日常的なやりとりだ……」
本当に日常が戻ってきたんだ、とこの面倒くさくもちょっと恥ずかしいやりとりで気が緩む。頬も緩む。そしてお腹の緊張も緩んだらしい。
ぐう、と大きなお腹の音。間近で聴かれて恥ずかしい。抱きついた悟がばっ!と離れて私の顔をニタニタとしながら見てる。
「わー、でっかいお腹の音だねえ~!虎の唸り声かと思った!」
『誰のせいだ誰のっ!』
「屏風から虎を出してみろ、一休~で、ハルカの腹から唸り声だけは出させましたよ!って報告出来そう!グルルゥ…って!プヒョ~!」
……この煽りニストが私の運命の人って思ったの、なんか残念になっちゃうな。
それが五条悟クオリティーなんだろうな、と呆れつつも彼の両頬を逃げられないように両手で挟んで。
『この余計な事ベラベラ喋るいらねえ機能はなんとかなんねえのかっ!アンドロイドの初期アプリ状態じゃねえか!アンイストールしろアンイストール!』