第4章 乱心、暴走
24.
高専の放課後。とある教室にて床に正座をするアイマスクをした男がひとり。
そしてその正面には椅子に脚も腕も組んで座る家入と釘崎。
「なんで僕こうなってんの?」
「それは伏黒が釘崎に伝えたからだろ?」
「なんで??」
「そりゃあ先生が振られた所を見たっていうから。
あっ、そこの教室を覗き込んでる男子!」
教室にはこの3人。その様子を廊下からドアに手を掛けじっと見ている目がある。
その気配を察知した釘崎は首をその方向へと向けると指を指して叫んだ。
「先生以外男子禁制!入りたくば女装でもしてこい!」
「えー?」
「俺は聞いてるから別に良いだろ、釘崎……」
釘崎と同じ一年の虎杖と伏黒だ。気になって様子を見ているようで、釘崎はそのふたりから正座をする五条へと視線を向けた。
「で、何が原因で別れたんです?性格上の問題です?」
「なんで皆性格だとかそう言うの……いくら僕でも傷付くってー、ぐすん…生徒にイジメられる僕って可哀想っ!」
「はっきり言ってやるな、釘崎。こう見えてショックが大きいようだ」
はーあ、とため息を吐く家入はそのまま続けた。
「私は言ったろ?五条。もう少し大人らしい振る舞いしろって。お遊びの延長線でまさかハルカに表面上の恋人、だなんて関係を作った訳じゃあるまい?だったら私に相談を持ちかけないもんな」
……そう。これは正座をする当人が、家入に相談を持ちかけた結果だった。
本当はアフターにと言いたい所、家入はこの後ハルカと七海の3人での居酒屋での食事が待っている。まさか、今目の前のこの男に"あんたを振った、飾りの彼女だった子と飲みに行くから無理"なんて言えない。所用があるから学校が終わったらと約束を取り付けた。
そこに伏黒経由で釘崎の耳に入った、というわけでこの状況が出来上がってしまった。
相談を呼びかけた五条はまさか教え子が居るとは思ってなかったので少々不服そうだ。
「ちゃんと大人らしい振る舞いしてたんだけれど…」
「表面上とは言い切れない過度なセクハラは大人らしいという言葉に収まらないぞ。五条が今まで大人らしい対応っていうの、聞いても良いか?」