第24章 ハロー、ニューワールド
『悟の多くの時間を私に取りすぎてるって事。
私が意識を失ってる間、ずっと側に居たんでしょ?ずっと、世話をしてたんでしょ?これは私が死ぬ前からも言えるんだけど、京都に頻繁に通ってたよね。悟、いつも私に時間を割いてたから……だから身体を壊しそうなくらいに疲れてる……私が側にいたら、倒れちゃうよ。一年も一緒に居ないのにこれだもん、これから先も同じことをきっと起こしちゃうだろうし…』
「……」
それは誰かに強制されたワケじゃない。僕自身がやりたくてしてた。ハルカに会うことが幸せだったし、彼女はいつだって優しく迎えてくれた。ちょっとツンデレな時もあるし、人前だとイチャイチャさせてくれないけどさー…基本的、ふたりきりの時は僕達は寄り添ってた。夫婦だしね、一緒に過ごしてご飯食べてお風呂入ってえっちして……。
それはハルカの為だけに時間を割いてたんじゃないし。彼女と僕の為に、もはやひとりじゃなくてふたりの為に割いてたってワケで。
「そんな理由で?僕からハルカを忘れさせてどうしたかったの、オマエ?」
言い辛そうに視線を落として口を重そうに開く、声量が蚊みたいに小さくて聞き取れないくらいに。
『私を忘れた後に別れて貰おうかな、て……』
「そんなんするわけねえだろ、馬鹿じゃねえの?絶対に手放すかよ」
『忘れてるからさくっと別れてくれるでしょ……、前に女の子達をさっくりと関係を切ったみたいに。
別に今、夫婦だからって子供が居るワケじゃないんだから』
「……あ゙?」
プツン、てきたわ、これ。地雷を踏んできた。
ずっと僕がハルカとの子供を狙ってたのは"コレ"があるから。こんな風に子供が居ないなら別れよう、なんて簡単に関係を切り捨てることの出来ないように繋ぐモノが欲しかった。
逃げる口実にならないようにさっさと子作りして子供を拵えとけば血の繋がりのある子供は捨てられない。逆に居なけりゃスパッと簡単に切り捨てられる。その後に手繰り寄せられる繋がりなんて一切ないからよりを戻すとかもなし。