第24章 ハロー、ニューワールド
すりすり、と頬ずりをしていると間を置いて片手で僕の頭を軽く数回撫でるハルカ。
『それは悟もでしょ?』
「んー、そうね。……ククッ、いつもみたいに乾かしっこしよっか?」
別に良いけど…、と少し歯切れの悪い返事。体調でも良くないのかな、今日は早めに寝かせた方が良いのかもしれない。
煮込み終えたらしく、火を止めるハルカ。
『話は変わるんだけどさ』
「んー、なぁに?」
任務が立て込んで、暇を作ってはハルカの元に通ってた。結構疲れてた体だけどさ、彼女にこうぎゅっとしてると嘘みたいに疲れが吹っ飛んでく。実際はそうじゃなくても僕は今、最高に癒やされていて至福の時間だった。
何の話かな?と緩く彼女の背後から抱きしめながら頬ずりを繰り返す。
『私の心肺蘇生って…どれくらい掛かったものなの?』
「ドライヤーの話から超話変わってるねー。変わりまくりんぐ。
……まあ、二時間は掛からなかったよ、大体一時間半くらいかなー」
『……そんなに…』
ぴた、と動作の止まるハルカ。どうしたんだろ?とその横顔を覗き込もうと抱きついたままに少し首を伸ばして見ようとしたら横目が僕の方に向いた。
「どうした?お腹でも痛い?正露丸貰ってくる?あの、くっせーの!」
『いや、うん…、よそってる間に悟にスプーンとか用意して貰おうかなって』
「そんな事かー、なら良かった。テーブルセッティングは僕に任せなさい!」
にこ、と微笑んでおいて彼女に背を向けて頼まれた通りに準備をしていく。
けど、違和感があった。背を向けた瞬間に何か術式を使ってる。気付かないフリをして食器を用意しておくけれど……食事をよそって僕とハルカの元に配膳してるのは彼女。
何も知らないって顔で互いに席に着いて。
……これさ、明らかに僕のミネストローネに異物が入ってるんだよね。見た目じゃ全然分からないけれど固形物とかじゃないね、そう…呪力。推測で言ってしまうならば彼女の血液。さっき使って何食わぬ顔してるけど、ハルカの中にはお母さんが降ろされてる、そう……さっき使ったのは髪降ろし"龍子"。
ここまで揃ってりゃ分かる。僕の中の記憶の何かを消そうとしてる。
『じゃ、食べよっか』