第24章 ハロー、ニューワールド
このまま彼の優しさに甘え続けたらこの先の悟の時間を私が奪い続けていく事になるんじゃ。一年以内でこれだもん、人生何がどうなっていくのか分からない。これ以上の悲劇だって起こりうるだろうし、それにぶち当たったとしたらこの人は全力で私を助けようと努力する。そういう人なんだし……。
『でも、さ、』
「それに秋の京都が間に合わなかったとか、そういうのは来年だってあるからねー。人生は長いんだから、また来年一緒に楽しもう」
『悟の誕生日だって私、』
「……今年の僕の誕生日はハルカが目が覚めた事がプレゼントだよ。最高の誕生日だよ?ありがとねっ!超嬉しいな~!」
弱音を吐くに全く吐けない。にこにこと笑顔の悟が隙を与えないように言葉を被せてきて。
がちゃ、とドアを音を立てて開け、部屋内に入る悟。
……あー…落ち着く懐かしい生活臭っていうか。自室故の安心感。
そこでそっと私を玄関先で降ろしてくれた。支えるように片手をしっかり握りしめて。
『ありがと、悟』
「ん、どういたしまして。どう?久しぶりの床。自力で立てそう?」
ぎゅっとしっかり彼の手を握ったままに冷たい床に立ち上がる感覚。魂という概念ではない、久しぶりの実体の重さを噛み締めて。
彼を見上げて私は頷いた。
『……うん、立てる。なんだろ、すっごく久しぶりだからか、ちょっと子鹿っぽくなるけど…』
少しふらっ、としたけれど立てる。
自室の床。特に夏場とか良く素足で歩いてた懐かしい感覚。懐かしさを上書きしようとしてる記憶はずっと領域内で足袋と下駄履いてたくさん歩いてた記憶。
ここでの自分の体での歩行はなんだかすごく久しぶりで感動した。
……けれども、ちょっと冷たいかなあ。やっぱり冬は靴下と部屋用のスリッパは必要かもね。
ゆっくり握られてた手を離されて部屋内へと進む。時折壁に手を着いて、始めこそ覚束なかったけれど十歩もしない内に慣れてしまった。
『うん、大丈夫』
「そっ!良かった!」