第24章 ハロー、ニューワールド
コツ、コツ、と通路を進む音。寒くて悟側に体を寄せている、密着した部分があったかい。素足は外気に晒したまま、そこ以外は彼に触れてぽかぽかしてる。
寮までひとつの建物であれば良かったのに建物が違うから、多少の屋根があっても渡り廊下を通る箇所があった。縮こまるくらいに寒くてしっかりとしがみつく。たった一日で冬が来た感じというか。
優しい声色での彼の「寒い?」にうん、と頷く。個室の暖房が適温だったから外は冬の風が吹いてる。積もってないけどぱらつく雪。雪が降ってるのならそりゃあ寒いわけだ。
『雪降ってるんだね。秋の京都…、悟と一緒に京都、廻りたかったなー…』
任務じゃなくてプライベートとして。名所を巡って、美味しいものを食べ歩いてさ。楽しく過ごしたかったのに、出来なくて。
くす、と笑って寮へと上がる悟。風が遮断されてほんのりと建物内が温かい、と一瞬に感じた。
「今年は忙しくてグダグダになっちゃったね。
桜の時期には出会ってないし、夏祭りの時期にはオマエは拐われるし。ハロウィンも僕はハルカに悪戯したかったのに死んじゃってたりしてね……僕の29歳の誕生日には間に合ったけど。
もー、ハルカ~そういう所だぞー?」
ぶっきらぼうに言いながら、片腕でぎゅっと私を支える悟。もう片手でちゃり、と音を鳴らして私の部屋の鍵穴に鍵を差し込んでる。
『……ごめんね』
私だけが残念がるもんじゃない。悟も楽しみたいのに楽しめなかったんだ。それは今に始まったことじゃなくて、出会った(彼からしたら再会した)時からずっと、ずっと。
私は一緒に居るのは幸せだと思うけれど、彼が私と一緒にいる時はそうやって私に多くの時間を取られてるんじゃないかって……。
そう思ったら目覚めて明るかった気分もあっという間に落ちていく。
「なにさ、急におセンチになっちゃって?京都での事は呪霊のせいでなったんだ。オマエは出来る限りの事をしたんだし、僕たちにも不備もあったんだ。むしろ、ひとりにしちゃった僕達が謝るべき事だよ。ハルカ、ごめんだなんて言わないで?」
そう優しくは言ってくれるけれど。
果たしてその優しさに甘え続けてしまっても良いのだろうか?