第24章 ハロー、ニューワールド
『そんなワケないじゃん、だって何度も何度も戻ろうとしたのに戻れなかった!』
私は確かに何度も現実へと戻ろうとした。現実ってか、現世?とにかく。
この場所にとても長く居る。睡眠時間が無いから余計にもっと長く感じてるのかもしれないけれど体感的に一年近くは居る気がする。これも感覚の問題で、領域展開した時もあったけど時間があるようでないような曖昧な空間にいても、現実的にあっちがどれくらいの時間が経過してるのかは知らないけれど。
それでいて私が生きてる、なんてあるはずがなかった。
目の前の母に食らいつかんばかりに前のめりになって反論する。
『だって、死んでた!確実に私は死んでてこんな格好でここに居るんだし、帰れないんだよ!?帰れなかった!』
「でも、確かに生きてるんだよ」
『生きてたって……っ!体が無けりゃどうしようもないんじゃないの……?』
──今、戻ろうとしたらどうなるんだろう?
自分の手のひらを見る。ここに来た時、何度も何度も戻ろうとした。けれど戻れなかった。繰り返し試みて、出来なくて。やがては生き返る事を諦めて。
……今、領域内からあちらへと戻ったとして。春日の一族の墓であれば腐った肉体に。火葬されていれば骨に。そんな状態に魂が宿るなんてバケモノじゃないの?
戻ったと思いきや肉体がありませんでした、だったら怨霊の類いになるかも。
ただ、想いが強すぎて生きてた元の世界に行ったら呪いとされるかもしれない。祓ってた側から祓われる側になんて嫌だ。
きっと長い時間をおいての魂が現世へと戻った時、私が人として生きてた世界で。ハルカという人間が存在出来る可能性はとても低かった。
自分自身の生き方を諦めるな、とかつて西宮に言われた事があったけれどこればっかりは物理的に無理、でしょ……。