• テキストサイズ

【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第24章 ハロー、ニューワールド


薄い布がいつもよりも周りの光景をはっきりと見せるのに、その光景は時折水没してる。瞬きをすれば顔に当たる布がそれを吸い取った。
母は私の前ですっ、と軽く腕を広げる。

「……おいで、ハルカ」
『……っ、』

その昔懐かしい胸の中にと私は飛び込むように抱きついた。
抱きつくのは良く悟としてた。それとは違う、懐かしいというか心から落ち着くような感覚がある。触れるという感覚はないのに確かに母という概念に抱かれてる。

抱きしめた、抱きしめられた。
無念、未練。やるべき事の多くを忘れてきてしまった。もっと生きたかった、ここに居る誰よりも年齢を重ねてから来るべきだった。
体温は感じない。ちっとも暖かくないのに抱きしめ合ってるって感覚だけはある。母はぎゅう、と私の首筋に顔を埋めた。

『みたらいでも春日でもなく、ずっと…五条として悟と一緒に生きたかった…っ!』

「……ん、」

弱音を受け止める優しさが、背をとんとんと定期的に叩く。
決してリベルタで捕まってた時のように、助けてなんて言えない。誰も助けてなんてくれない。もう終わってしまった私の人生、そして運命なのだから。
何度も不幸が襲っては転び、奇跡が立ち上がらせてくれた。
私のこの死という不運に対する奇跡はあの心臓を一度治せた事で終わってた。

生きたいって願いはもう叶える事はない。奇跡は終わっちゃったから。いくら諦めないって思っても終わったものに続きなんてなくて。
その現実に打ちのめされそうで母を引き寄せる力を強めた。ぎゅうっと抱きついて嗚咽を上げた。大人になってこんなに泣きじゃくってごめんなさい。小さな子供に戻ったようにわんわんと泣いた。そんな私の背を懐かしいリズムであやすのは、大好きな母の優しい手。

「ハルカ」
『………うっ、ぐ……………ぐずっ、』
「ねえ、ハルカ。聞いてる?」
『な、に…?』

とんとん、という背のリズムは止んだ。そしてするりと私を抱き寄せた母は私から離れる。
/ 2273ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp