第24章 ハロー、ニューワールド
『死んじゃったのはどうしようもないけど。残してきた悟が心配だなー…』
母を見れば布切れを持ち上げてウインクをして笑う。
「ふふ…っ、あの坊や女の子には困ら無さそうだものね?」
「リョウちゃん!」『母さん!』
鶴さんと声を重ねて母にツッコむ。ひら、と指先から逃れるように顔に掛かる布。ふん、と鼻で笑ったらしい母の布がふわりと持ち上がってニヤける口元が見えた。
「あらあら、失礼しました~」
『……でも、あいつ相当な寂しがりだから……私が死んですぐに他の子引っ掛ける、かも……』
焦りと嫉妬。けれどもここから何か出来る事はなくて。死んだ手前で文句なんて言えないし。
不安な心の中でそれでももし、あの悟をなんとか支えられるような私よりも悟にぴったりな人であればそれはそれで幸せになって欲しい。そういう願いもあった。
死んだ私をずるずる引き摺るのならば、生きた人と幸せになる生き方をして欲しい。
良い人でありたかった、という願いと他の女の子に引っかかるな、という生への未練からの妬みもある。人という生き物の嫌な部分を実感してる。これはただの純粋な愛であれば良かったものを、呪いである愛を誓ってしまったから?それとも、呪いで続いた一族だから?ただ単に。私がそういう女だからなのかも。
「ハルカ、」
俯く私に一度だけ名前を母に呼ばれる。
私はどうせ死んでしまって、手出しは出来ない。春日の一族なんて重苦しくて手間がかかる私よりももっと普通な人に悟には巡り合って欲しい。その願いは紛れもなくある、あるんだよ。でも、それでも……っ!
『母さん。私は…、』
これほどまでに死んでもまだ身を焦がすくらいに好きな人は悟以外には存在しなかった。さまざまな愛という形、父や兄弟、親友…それら全てのなかでの愛する人、一番の人。
どうしようもないこの燃え盛るような感情をどこに吐き出したら良いのか分からなくて。