第24章 ハロー、ニューワールド
「ネットで色々と出来る時代になってきたんだ……進化だね、進化」
『母さん死んでからそう経ってないのにね、相変わらずアイフォン新作が出る度に大行列だよ』
「ははは…私もやっとスマホをゲット!って頃に死んだしねえ~…」
私と母でそんな事を話していると、近くに居た伯母ふたりがより距離を縮めて来て。
「すまほ…?」
鶴さんが首を傾げる。顔が隠れているから表情は見えないけれどもきっと穏やかな声色にあった、優しい表情なんだろうとイメージをしつつ。
彼女達の生きられなかった、春日の血の新しい時代である現代の単語についてを説明した。
『手のひらサイズの平べったいのですよ、電話もネットもゲームも……音楽、読書だって済ませられる。買い物も画面見せてピッ!で済ませたり、自分のスマホから友達にコーヒーでも飲みな~ってギフトを贈ったり…』
私にとっての当たり前は生きられなかった彼女達には想像の域でしかない。ふーん、へー!と興味を持つ声色で相槌をしてくれた。
「便利ねえ…、私達はすまほなんて無い時代のうちに死んでしまったから…」
生命維持の食べる事も睡眠も要らない状態ならば疲れもなく、娯楽が無い退屈な領域ならばくっちゃべるしかない。以前にも悟の既婚歴が…、と母が教えてくれた時、周りの雰囲気がこんな感じだった事を思い出した。
私は生きていた時も時間の流れが曖昧な領域内ではこんな風に静かにしてるか喋ってるかのどっちかでこの空間で過ごしてる春日の一族達。
「……娯楽ってものが無いものね、唯一外から持ってこられた呪いを痛めつけるだとか、新しく死んだ仲間を迎えるくらいしかなかったもの」
「でもつる姉、もうそれらも無いでしょ、」
「かめちゃん!」
ツッコミに言い返す言葉もない。本当の末裔になってしまったのだからそれは仕方ないのだし。薄い布越しに見えるふたりはコントでもしてるみたいにひとりが突っ込んでる。まるでデリカシーのない発言をした悟にツッコむ私を思い出すような、客観的に見ているポジションに立ってるような。
はあ、と私はため息をついた。