第24章 ハロー、ニューワールド
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閉鎖的な領域の中で、私はふらふらと同じ世界を歩くのにも飽きていた。もしも観光案内でもして、と誰かに頼まれたら僅かな残留物の案内をきっちり出来そうなくらい。
終わるならさっさとこの世界が終わってしまえば良いのに。母の一族への滅びの思考が今ならすごく良く分かる気がする。
立つか座るかしゃべるかくらいしかしてない人達。もうやるなら全員をボコるトーナメントでも組んでみたらどうだろう?喧嘩賭博的な?でも賭ける価値のあるものはここに一切ないし。
……ここで小石を通貨にして何か作って発展させてく?ちょっとした文明開化でもさ?穴を掘ってみるとか?枯れた大地の下には何があるのだろう?奈落?でも道具とかないし素手はキツいな。
なーんの娯楽もなくて、リベルタに捕まってた時よりはマシな状況だけど下らない事をぼんやりとしながら考えていた。
あー…こういう時は漫画とか読みたくなるんだよね。あーあ、なんで持ち込みが出来ないんだろう。ウエストポーチは身につけてたんだし、携帯くらいは持ち込ませて欲しい。電波、絶対に圏外だと思うけど!
『あー……最新話の配信、どこまで進んだんだろ』
「配信?」
口から出た言葉を耳にして、拾った者が数名。母が即食いついた。
『うん。母さん、今どきは毎週分厚い週刊誌買わずとも携帯ひとつで見れるんだよ、コンビニに行かずとも定期的に支払っていて、家に居ながらジャンプが読めちゃう!ってね。それが定着してんの』
「へー」
母や、母の姉…伯母達と時々会話をしつつ食事も睡眠も要らない時間を過ごす。
母と話していれば伯母達がそろそろと近付いて来たのがきっかけ。伯母達は私よりも若い状態で死んでいたみたいで、伯母さんというのは躊躇われた。ただ、伯母さんなんだと理解はしておいて母が呼ぶ"つる姉"、"かめ姉"という名前を借り、鶴さん亀さんと私は呼んだ。
母は四人姉妹だって言ってたけれど、あともうひとりはここには居ない。何故なら呪術を使う前に…幼いうちに死んでしまったから。他にも生まれる前に死んでいった伯父達もたくさん居た、とか。
そういう情報を死んでから初めて聞いて、多産の一族っていっても家系図にはそういうのは載らないワケか…と妙に納得した。あの孫にまで迫る祖母だしね、自分で四人しか産めませんでした!なんて事ないとは思ったけれど。