第23章 突然ですが、さようなら
「迷子、ねえ……、」
じっと寝顔を覗き込む。悟が言うには体は生きてるのに魂が死んでるって思い込んでるって曖昧な状態らしいけど。
そんな状態の彼女に生きてるんだから起きようよ、なんて言葉をどうやって伝えれば良いんだろうね…。
私は眠るハルカの手を取り、そっともう片手で包み込むように挟む。握手なんて握る力がないのだから無理なんだし、こうするしかないからね。
ずっとずっと、主に悟がハルカの世話をしてる。
もちろん、硝子や京都からマリアがやって来て自分ではどうにも出来ない世話をしているみたいだけれど。それでも手はすべすべしていて爪も手入れがされていて。時折、来るタイミングによってはカーテンで締めて「外で待ってて貰える?」と言われるような世話をしてる時もあった。また、掛け布団を剥がし、四肢を動かしてる時だってある。これは結構こまめにやってて……。筋力が落ちにないようにと身体を動かしているんだと、ベッドサイドのテーブルの幾つもの本で察した。
手を握って喋り続ける悟を私は何度も見てる。
反応が一切返って来なくてもハルカが目覚めるのを絶対に諦めない友。
弱々しくもきゅ、と乗せた手を握った。
「眠りすぎても仕方ないだろ?悟が待ってるからいい加減、起きてあげな」
なんの反応もなくすやすやと眠るハルカの手をそっと置き、私も部屋の外へとそっと出ていった。
「おやすみ、また明日」