第23章 突然ですが、さようなら
撫でる手を引っ込め、そっとハルカに布団を掛け直した悟。季節はハルカがこうなってしまった秋から冬に入った所。十一月もあと少しで終わりを告げる、そんな時期になればもちろん肌寒い。風邪でも引いてしまったら困るよね。しっかりと冷えないようにと布団を掛け終えた悟は、疲れたようにポケットから端末を取り出した。
「……また僕とハルカを引き裂くお邪魔虫かな~…」
「任務って言ってやれよ……」
バイブレーション。連絡が入ったみたいで。そのまま通話モードにして耳に当ててる。
「……ほい、ごじょー悟です、………ん、それ、僕じゃないと駄目なやつ?……チッ、分かった」
疲れてるんだろう、明らかな機嫌の悪さと覇気のない態度。通話を終えた端末をベッドにぽい、と投げるとハルカの近くのシーツの上にぽすっ、と乗る。画面を消し忘れたのか、壁紙のハルカの画像が見えた……術師の交流会の時の着飾った彼女だ。
はあー…、と大きなため息を吐いてなかなか椅子から立ち上がらない悟。いつもなら私も任務だろ、急いで行きなよと言いたい所だけれど状況が状況。急かせなかった。少しでも悟を休ませたいものだけど。
「こういっちゃ悟を疑うもんだけど。意外としっかりしてたんだな」
「んー?僕の何を疑うって?」
座りながらにベッドに上半身を乗せ、片手で頬杖をつき、眠るハルカをじっくりと間近で観察してる。私を見る事なく会話をしていた。
「……寝てる彼女を襲ってる可能性とかちょっと考えた」
「ははっ!……流石にそれはねえよ。だってそんな事して孕ませたってさ~、栄養もロクに摂れない状態で産む時に負担が掛かるだろ?そこでハルカを死なせたら意味ないしさ」
私の心配の斜め上を考えてたようだね…。
驚いて少し間を開け、私は腕を組みながら悟の後ろ姿を見る。彼はハルカに夢中だ。
「……私は欲の発散という意味で疑ったんだけど。まさかの答えにびっくりだよ……まあ、そういう方向も実践しない事にも感心したよ」
「そーお?奥さん想いの良い旦那さんなんでね、僕。通称スパダリ…覚えておきなよ、傑」