第23章 突然ですが、さようなら
『手錠の解除後に適切に破棄するよ、元より保管されてた物よりも腐食が進んでるしね……。
けど、呪物を使って入れ替わってさ…はっきりと分かった事があんだよ。僕の考え、聞いてくんない?』
しょぼしょぼとした瞳。たまに眠そうなハルカの顔をしてる、ハルカの身体。ハルカが気だるそうにシーツの上の鍵で悟の体の手首を寄せて互いを拘束する手錠を解き、ゆっくりとバランスを崩して倒れそうなハルカの身体を私は急いで支え、そっと枕へと倒した。
直ぐ側ではむくりと起き上がる、さっきまでうつ伏せになってた悟。ベッドにサングラスを置き去りにして顔を上げた。自信のある表情をしている……。
「硝子が言ってた微弱な脳波がたまにある、っていうの。それ、多分ハルカの魂……いや、これは意識っていった方が良いの?まあ、それは置いといて。そういう形のないモノがさ、迷子になってんの、こいつ」
「まいご……?」
カチャカチャと音を立て、封印用の木箱に少し乱暴に鍵と共に突っ込んでるのを見ながら悟の話に耳を傾ける。
何を言ってるのか分からないけど、頭が悪い男じゃないのだし口を挟まずに聞いていく。
悟はハルカを見、手を伸ばしてハルカの頭を慈しむようにゆっくりと撫でている。
「多分…、ハルカ自身も死んだって思い込んでる。あの時の状況を誰よりも自分自身で理解してる。心臓治せたのはまだ生きてるって思っててもさ、その後の攻撃で覚悟決めたんだろ。ああ、終わった…って。
でも、僕たちさ、必死になって死んだ原因である身体を正常に戻したじゃん?生きていける身体になってるって事、それをハルカは知らない……んだと思う」
「………」
「神サマだか閻魔大王だかに貴女はここには来れませんよって門前払いされたんじゃない?あの日からずっと、あの世とこの世の間を彷徨ってんのかな、入れ替わる瞬間的に意識がぼんやり覚醒しそうでしない曖昧な感じした……」