第23章 突然ですが、さようなら
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紙袋に入った軽い食事を持って私は今、高専の医務室に向かっていた。医務室の並びにある個室。そこにきっと彼は居る。
彼、私の高専時代からの親友こと、五条悟。悟ははっきり言って彼女が死からの蘇生をしたあの日からおかしくなってしまった。
「(今日も悟は食事をしていないんだろうな……)」
歩きながらにがさ、と私が持つ紙袋を持ち上げる。
しっかりと食べては欲しい、私も彼も同じ特級呪術師。今、倒れられては困る、友としても同業者としても。
元より軽薄でマイペースが過ぎる男ではあった。昔から人を振り回す、それは今も同じだけれどハルカと出会うまでは女性とは好きな時に遊んでいる男だった。切り離す時に巻き込まれた時もあった。とある時にはデート中に他の女の子にばったり出くわしてぎゃあぎゃあと女ふたりでつかみ合いの喧嘩になった、という話を悟が笑いながら話していた(その場から逃げ出したらしい)
いつか刺されるよ、そんなに誠実ではない関係をしていると。そんなアドバイスも活用されず、何年もしてからだった。
悟に寄り添って、悟自身も大切に出来る存在が遂に出来た。
それは喜ばしい事で、始めこそ信じられず。けれども実際に会ってみれば確かに悟はハルカにぞっこんで、彼女以外の女性の影はなく。予想外であったのがそのハルカは衰退した一族、春日の一族という事。そのせいもあって事件に巻き込まれる事もあって…。
風に運ばれる落ち葉がカサカサと地面に円を描いている。だいぶ木々から葉が落ちて冬がすぐそこまで迫っていると季節が教えてくれていた。忙しかったハロウィンは過ぎてもう十一月だ。
今日の私は急ぎの用事はないので、ゆっくりとした足取りで医務室に向かっているけれど、繁忙期の過ぎた呪術高専の敷地内はまるで私以外の人間が居ないみたいだ。
「うん、静かなものだね…、」