第4章 乱心、暴走
23.
「反転術式のコツ、ね……私に聞いても。五条に聞いた方がまだ分かりやすいんじゃないのか?」
呪高に居候を始めて1週間…は経ってるか、8日目かな。今日は悟が居ないので治療を終えてこの後は事務の手伝いが入っていた。
行く前に家入と少々話をする。
確かに悟に聞けば手取り足取り教えるだろうけれど…丁寧だしね。でも、対価を求められるのだ。キスして?とか。それを断ってじゃあ別の人に聞きますと言えば、絡みが激しくなる。だから最終的には自分で考える、とそう逃げるように伝えている。
私は悟には出来るだけ、今の関係以上にならないようにしている。深入りは危険だから。
『あの、対価が…』
「ん?あー…必要以上のボディタッチとかだっけか。あいつはクソガキみたいな事してんな……油断はするなよ?」
椅子に座って俯く。
あまり必要以上に悟に関連する事を考えたくない。そこまでキているのが、大きな心の中の井戸に詰め込み続けたもの。
取り出される事なく、上へ上へと積み上がり続ける"何か"。分かっちゃいるけれど気付かない為にも無理に蓋をしている。
『──私、いつ言おうか迷ってるんですよ、』
「んー?五条にか?」
うつむいたままに頷く。
これ以上は無理だからと。
『その表面上の恋人っていうの。付き合っているっていうの……止めたいんですよ』
「……ほ?つまり、どういう事だ?」
同じく椅子に座った家入は前傾姿勢で食いついてるのが、視界に入る。顔までは見えないけれど。白衣を着た、上半身までが見えるんだけれど。
その白衣も揺らいでる。瞬き一つでゆらぎは消えて、頬に伝っていく暖かさ。また新しい泉が出来上がっていく。
『心を弄ばれる為の関係ならば私は別れて貰いたいって。祖母の前だけは必要だったけれどもう行かないし…。私、あの人が何をしたいのか…何を考えてるのか……っ、しばらくこの関係を続けるってわかんない…!……これ以上は私、無理なんだって……!』
「……は…?」