第3章 呪術を使いこなす事
『…んむっ……!!?』
慌てて両手で自身の目元を塞いでしまったモノを取ろうとするも深追いするようにキスが深くなっていく。
ピチャ……ちゅっ、と耳に伝わる音がぞくぞくとさせる。片手は手首を掴まれて動かせないから、もう片手で自身の頭へと触れてその自ら被った布を剥ぎ取った。
目の前に広がるのは勝ち誇ったスカイブルー。
『んっ、ん~っ!』
「………っは!油断しすぎだよ?キミは!視覚を自分から閉ざすなんて、こういう展開も予想したって良いんだぜ?」
『……いくら、なんでも…っ、悟は……っ!』
これはやりすぎのような気がする。
"表面上恋人だから"じゃ本気で済まない。恋人という名前の飾りで一緒に寝たり(添い寝)なんておかしいし。
にこにことする悟に喉まで上がる言葉…それがまだ言い出せなくて。私はその場で頭を振って、アイマスクを突き出すように返した。
返されたアイマスクを着けて、悟は軽い運動をする。私も同じくして、始まった。悟はなんとも思わずとも、私は引きずっているのに…。
「ほら、反応遅い。意識して自分にさーバフ掛ける感じにしてよ」
『あーっもう!やってるつもりだっちゅうのっ!』
「だっちゅうの?寄せてみてみ?」
『いつの時代のギャグだよっ!そこまでのボリュームに達してないわっ!』
普通に蹴られるし、殴られる。でも、相当手加減されているのも分かる。喧嘩程度というよりも寸止めを失敗して触れたくらいだろうか?
頭の片隅で、早く反転術式を覚えて、出来るだけ悟と居る時間を減らしたほうが良いんじゃないのかな、と距離感を考えながら、悟には届かず無限に阻まれる蹴りを、私は繰り返した。