第23章 突然ですが、さようなら
窓から瞳を閉じたままの彼女へと視線を移し、瞳を閉じたままの彼女に微笑む。
病院であるから来る度にこういった彼女に吸い寄せられた呪いが近くに居れば僕は祓った。呪力が覆ってそれで自動的に祓ってるっていっても等級が上のクラスの呪霊だったらひとたまりもない。
というか人でもそうだけど、呪いにも無防備すぎる状態のハルカには触れられたくないから等級なんて関係なく僕は祓ってしまっているけれど。
薄暗くなった外。眠るハルカの髪を数度撫でて。
「また明日、来るね。京都よりこっちなら近いから毎日オマエに逢いに来れるのは嬉しいねー……」
さら、とした髪。それに違和感を感じて指先にその髪を絡めて少しだけ持ち上げる。
少し白髪化が進んでる、ような……?見えない身体の負傷でも治したのかな?僕が居ない間に呪いが近付いて纏う呪力で燃やして祓った?いずれにしろ、まだ地毛は多く春日の一族達の死因の原因である白髪化からの死には遠い。まだ安全であるのは越したことないけど……。
「……安全だって、過信も良くないって僕は学んだろ…、」
リベルタで使われてた呪力圧縮装置。持ち運び出来るやつを高専で回収してた。あれをここに持ち込んでマリアも連れてハルカにから溜まった呪力を回収して貰おうか。急でないにしろ、既に半分程は白に染まってんだ。半分程度だからって安心してどうすんだ。もしもを考えろ。
「……おやすみ、ハルカ。良い夢を見て早く目覚めるんだよ?」
指に絡めてた髪を下ろし、綺麗に髪を整え直して額にキスを落とす。今日はこれでお別れだ。キミの居ない部屋に今日もひとりで僕は帰るよ…。
僕がハルカの病室から出ると、近くの、どこかの病室で揉めてる声が聴こえた。思わず立ち止まって耳を傾ける。どんな内容の喧嘩なんだか。少し面白半分で立ち聞きをしてみた。
"医者が治せないクセに医療費なんか払ってられっかよ!"
"ですかそれは…っああっ!"
ガシャン。何かの落ちる音。破壊音ではないけれど派手な音だ…
"切らず飲まずで治せんじゃねえか!簡単に治るモンだろうがっ!詐欺だ詐欺!あの男に払った金で充分だ、お前らや医者に払う金はねえ!"