第23章 突然ですが、さようなら
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彼女が一度死に奇跡的に息を吹き返した、忘れられないあの一日から一週間は経過して、目覚めないハルカの世話も慣れてきて。初めは京都の病院で、その三日後からは東京の大きな病院へと彼女を移している。
「ハルカ、じゃあ今日もしよっか」
『……』
「えー?面倒くさい?大丈夫!ぜーんぶ僕に委ねてね?」
ただたくさん話しかけるだけじゃなくて、動けない彼女の身体をストレッチさせて可能な限り筋力を落とさないようにしないとってね。眠るハルカの頬を撫で、掛け布団をそっと剥がした。
ちょっと面倒くさいって思ってたけれど、好きであるからこそ起きた彼女とすぐに隣り合って歩けるように。大きなお人形さんをめいいっぱいに動かして素肌に触れて、マッサージとかしてみたり。リハビリの本を片手に学びながらハルカをただ眠ってるだけにしないようにして。
彼女の様子というか、僕目当てというか。頻度良くやってくる看護師さんに微笑まれながら「奥さん想いの旦那さんですねー」だなんて言われて僕は満更でもなくて。そりゃあ、大事な奥さんだもんね、これでくらいはしないと!
……けれども、奥さん以外の女の子と一緒にはごはんはもう行きたくないし、連絡も取りたくはない。何度も入れ違いにやって来る女の子の連絡先は小さく術で潰し、背を向けた瞬間にゴミ箱へと捨てている。
昔の僕だったら来る者拒まずで、看護婦さんかあ~って食いついてただろうけど。僕にはもう「この人しか居ない」っていう運命の人に出逢えてしまったからハルカ以外はもう要らない。
「……ふぅ、今日はこんな所かな。お疲れサマンサ!」
『……』
「疲れた?疲れたならゆっくりと休んでね?たくさん眠って、体を休めて。元気なオマエを僕に見せてよ……
また、オマエは呪いを寄せてきたね……もう、僕以外に好かれない天与呪縛であれば良いのに」
窓の外から覗く呪い。等級は低く、見てその細い手足をねじ切って祓えば胴体ごと消えていく。
「うん、よし……他には居ないね、これで安心だ」