第23章 突然ですが、さようなら
「刺激があれば回復もあるかもだし回復出来ないならハルカが死ぬ時まで一生このままの状態だ。
今の状態のハルカは心肺が正常になっても自力で生存本能を満たすことは出来ない。点滴で食事をし、トイレは看護師に取り替えて貰うはめになってるし、もちろん頭で考え言葉を交わすようなコミュニケーションすらも出来ない。こういう状態ですぐ死ぬって事はそうそうないから……うん。ハルカは若いからねー、下手したら何十年もこのままかもしれない」
ずっと、このまま……。
「……」
「意識が回復するようにって脳波が正常になるようにと話しかけたり、触れたりと努力するのは良いよ?そういうのがトリガーになって目を覚ます事があるっていうのはいくつもの事例があるし、医師もそう勧める。証明されてる。あんたがここの医者に言われたかどうかは知らないけれどさ……?
でもそれが必ず報われるって事は誰にも保証が出来ないんだ」
ずっとずっと…このままの状態のハルカ、なんて…。
言葉を僕は無くした。楽観的にきっと明日には目覚めるだろうって。治療をオートマでこなしてるんだし、きっと…。
でも、彼女が治癒出来るのは限られてるってのも知ってる。彼女が治癒出来るのは"負"。脳波がない事は"負"になるのか、それすらも判断出来ない状態なのか誰にも分からない。それの判断基準はハルカの中でしか出来ない事。
硝子の問いかけるような、少し責める視線が僕と合った。
「だから、助けない方が幸せだったって事もあったんだ」
「……」
それも幸せな選択肢であった、という事。
すぐ目覚めれば僕のした事は大正解なのは言うまでもないけれど、必ずしも彼女が目覚めるかどうか、それが誰にも分からないこの現状には正解だ、だなんて僕以外には思えない事を知った。
硝子はこれから先起こりうる事を口にしていく。