第23章 突然ですが、さようなら
シートの掛かった補助監督生の遺体を見付けた隊員に、憂太が「こちらの方は今、専属の医療担当者が見るんで…、」と説明して引き取られないようにしてる。
そうだ、瞬間的な部分しか知らないから詳細は硝子が見ないと行けない。多分、硝子が到着したら治療をとっとと終わらせた後に京都の高専でマリアと一緒に解剖するんだろうなって。
そんな事を考えながら小走りに、隊員と一緒に救急車へと僕は駆け込む。
救急車の中という少し貴重な体験だけれど楽しむ余裕なんてぶっちゃけない。僕の意識は眠る彼女にしか向かなかった。
外傷も無いのに血だらけの制服。不気味がりながらも確かに目覚めないハルカの事を注意深く見守る隊員たち。ずっとけたたましいサイレンが鳴り続ける中で、僕はただ眠ってるだけのようなハルカの肩に服越しに触れた。
眠ったような彼女、胸は上下してきちんと生きようと時を刻んでいる。そのハルカがゆらゆらと僕の視界の中で溺れていく。
あーあ。今更になって出てきちゃった。まあ、救急隊員の前でくらいなら良いでしょ。高専の皆の前で天才最強の僕がみっともなく泣くなんて事、してられないしね?
「ハルカ………生ぎでて、良がっ、だぁ…っ」
彼女に縋るように頬に触れて、ぐずっ、と鼻をすする僕。約2時間の激闘、ぐっしょりと汗をかいた事は無駄じゃなかった。ハルカは死んでない、こうして生きてる奇跡。またあの些細な日常で笑い合える幸せな日々が戻るんだって思ったら僕はもう涙が溢れて止まる事を知らなかった。