第23章 突然ですが、さようなら
「……うーん、身体自体は無意識に負傷してる場所を治してる、けど呪術師以前にこういう人体に関するのは専門の所で見てもらった方が良いな。硝子もここに到着するのに多分一時間は掛かる、ハルカだって心肺機能が回復した所でまだ目覚めもしないし……この状態が続く保証も分かんないしね…」
「救急車呼ぶ?」
「そうだねえ……、」
いつもの感じだと翌日とかに目が覚めるとは思う、けども気がかりだから病院は早めに行った方が良い……ような気がする。僕は歌姫の心配そうな顔に頷いてにっ!と笑っておいた。
「うん、呼んで。大きい所で優先的に見てもらえるしね~……。僕はハルカのバッグ持って一緒に救急車に相乗りするわ、あー初めての救急車の付き添い、楽しみだなー!」
彼女だけを連れてかれたくない、もちろん側に居たい。生きているという実感をもっと側で感じたいんだ。
そんな僕の言葉を聞いて歌姫が鼻で笑った。
「あんたこういう事態にそんなテンションで居られる?フツー。ばっかじゃないの!?……ったく、私が呼んでおくわよ、」
呆れたって感じの表情で連絡を始める歌姫。横たわるハルカの側のベルトの引きちぎれたウエストポーチ。血がこべりついてるそのファスナーを開けて財布を取り出す。運転免許証やら保険証、ああ、ポーチの中にお薬手帳まで常備してんのね。よしよし……。
しばらくすれば外からのサイレン。駆けつけてくる隊員が数名。
憂太が使い終えたAEDを渡し、ある隊員は呼吸を確認し、脈を確認しながら僕の側のハルカを隊員が意識の確認をしてる。
「……じゃあ、ここの現場責任者は歌姫に投げ……間違った、任せとこっと!」
「とっとと行け!」
ぷりぷりとヒスる歌姫に叩かれそうなのをひょいと避けてハルカの荷物を抱える僕。