第3章 呪術を使いこなす事
腕の中のツカモトを見る。すぴすぴと寝息を立てている。
「悟?……おーい、悟やーい……さと…、はっ、どうせそうやって敬称付けるの待つっていうんでしょ、するわけないじゃん。そこまで私鳥頭じゃないし。
先行ってるからー!」
ツカモトを抱き、悟が突如行方不明になった為にひとり通路を進むと、道の真ん中に落とし物を見つけた。
見覚えのあるもの。さっきまで一緒に居た人物の所持品であるのは明白。
『……名前書いてなくてもこりゃあ、悟のだわ。シンデレラかよ…、』
それを屈んで拾う。いつも身につけている黒いアイマスク。
あんにゃろ、ポケットにでもテキトーに詰めてのかな、落としてやんの。どうせ体育館に行くなら持って行こう。顔面偏差値が高い分、周囲への影響は大きい。もはやSCPかもしれない。はやく隠してやらなきゃ、だけれど本人はここにいない。もう体育館かな…。
もう一度周囲を見て、わたしはそれを握って体育館へと向かった。
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『……居ねえわぁ…先に来たんじゃないの、28歳児~…』
隠れんぼしよう、て事じゃないよね?そこまで子供じゃないし。周りを見渡し、私ひとりしか居ない広い室内。
体術中はツカモトが暴れないようにと悟から教わった方法を施し、また周りをきょろきょろと見渡す。ただ待つのもやることがないし。
手に握ってるのはアイマスク。閃くのは疑問を自ら解決する方法。
『………?』
これ、本当に見えないのかな?両手でみょんみょんと延ばしてその穴を覗き込む。アイマスクというかヘアバンドというか。
見えるの?見えないの?光通すの?と抗えない興味からか頭からすっぽりと被り、目元に移動させた。
うん、なーんも見えな……──
──気配、風。
そして前方へと引き寄せられる体と唇が柔らかいものに完全に塞がれる感覚。