第23章 突然ですが、さようなら
奇跡を信じて何度も空気を送り込んで。電気を浴びせて。また心臓を…──。
ただ疲れるんじゃなくて焦りもする。どれだけ必死に足掻こうとも結果はいつまでも見えてこない、ハルカは未だに目を開けることも息も吹き返すこともなく。
それでも焦りすぎてテンポが崩れないように注意をして……ものすごく気を遣うね、これは。
あと十数分もすれば2時間ほどこうしてるって事になるのか。ハルカを諦める事が出来ない僕は意地でも蘇生を続けてる。
……生きろ、生きろ、なに勝手に死んでんだ、馬鹿ハルカ…っ
もはやただの意地になって続けてるみたいな僕自身に嫌気もさしてきた。このまま彼女が無反応なら、3時間、4時間って続けんの?それって蘇生って言える?必ず努力が報われるなんて誰も教えちゃくれないのに。心臓を動けと圧迫してる、そんな僕にタンッ!と肩を叩く刺激。
焦りながらもその人物の顔を見上げた。
「何っ!?こっちは、必死なんだけどっ!?」
「先生っ、待って下さい!」
僕を止めたのは憂太。憂太が必死に僕に訴える。
2時間やって無反応なら諦めろっていうのかな、そんな選択僕には無いんだけど?と思ったんだけど。
憂太は驚いた顔で、胸元に葵から受け取ったタオルを掛けたハルカを見てる。
「心臓マッサージ止めて下さい!」
「は?」
ばっ、と横たわるハルカを見る。僅かに上下するタオル。
『…………は、っ……』
半開きにした唇、そこから呼吸するのに呻くような声が小さく聴こえた。意識は無いみたいだけれど……。
必死過ぎて自分の心臓がずっとバクバクいってるのと、呼吸が乱れ、僕の心肺が乱れてるのを落ち着け、と片手で胸元を掴みながら意を決して丁度汗が拭えたその手で。
そっとハルカの顎下に手を添えた。
トク、トク、トク……
そのまま静かなフロア。いや、駅の中に陣取って作った仮拠点でハルカの口元に耳を近付ける。か細くも、すぅ、すはぁ…、と彼女自体からの生きる意志を感じた。