第23章 突然ですが、さようなら
221.
今、私がいる世界、いや領域。領域展開……、集大成"鎹"の密閉された場所。
この外部から二度と部外者が入ってくる事も、ここに居る者が出ることも出来なくなった閉ざされた世界は、外部との関わりを完全に断ち切ってしまっていた。
……春日の女の血筋は私で途絶えてしまったから。
始まりは鎹からの春日の一族。
血が続いて行く中で誰かが意識的に作った縛りのようなモノなのか、それとも一族の末裔までが呪う為にと代を繋げる事で自然に発生した呪いなのか。姦しいはずの大所帯、女だからけの花園のはずが静かな空間になっていて。
私はひとり、領域内をぶらぶらと歩いていた。
私も含めてみんな死者。お腹も減らない、眠らない。荒れ地でひたすら歩けば似たような光景、白装束の人達が居て墓地以外の荒れ地はどこかからかが繋がってる。ループしてるから墓地に立って左にずっと進めば右側から墓地に帰ってくる、みたいな。娯楽もないし食べ物も飲み物もないし。
……することがないからきっと話題も出尽くして黙るしか無いんじゃないのかな、ここの死んだ人達。
死んだくせに未だに死んだって事が信じられなくて、何もせずには居られなくて。ただひたすらずっと歩いてる。今の私は魂みたいなものなのかな、ハルカという生きてた時と同じく人の形をした概念。誰も会いに来ないこの一族の空間で長い時を過ごして、いつか悟が死んだ事も知らないままずっとずっとこの空間で過ごし続けるんだろう。それはとてもつらいよね、成仏もせずに生まれ変われる事がないのだから……願わくばこの空間が崩壊だとか消える事があることを祈りたい。
信じられない、と何度も自分に絶望してる。
あっけなさ過ぎて身体はもう火葬でもされてるに違いない。写真はどういうの使われたんだろう?海辺の悟をキン肉バスターした時のは使わないで欲しいな。せめて最期はいい写真で、ちょっと加工してくれればとか考えて、そんな事を普通の死者は考えないでしょ、とひとり首を横に振る。
とても長くゆっくりとした時間が流れる苦痛。もう身体に戻ろうって希望も捨てた。
死んだら衣服が変わってた。そういう事なんだ、と生きてた時は制服だったり私服だったけれど死んだら何も持ち込めなくて、携帯はもちろん、結婚指輪もなくて。