第23章 突然ですが、さようなら
「え、AED…っ」
「うん、分かった受け取るってば」
それを受け取って急いで手順通りに進めていった。心拍数が無いと感知したAEDは電気を流すと音声を流し、憂太と僕はハルカから少し離れれば、ビクン、と跳ねるハルカの身体。電気ショックが彼女に流れても心肺機能は回復せず。
……続きをしなきゃ。
僕はハルカの側に寄って心臓マッサージを再開した。
手の空いた術師が覗き込もうとする、近付く気配。憂太が「手が空いてるのでしたら、他の方の任務を手伝って下さい!」とやんわり遠ざける。怪我をして止む終えなく、ここに待機の監督生が興味本位で近付こうものなら「五条先生の集中力が途切れるので…出来るだけ放っておいて下さい」と下がらせた。
憂太に頼んでおいて良かった、これで僕は集中が出来る。十分に彼女に対しての努力が出来るよ。
──僕はさ、いつだって全力でハルカを愛してたよ。
でも死なれる覚悟なんてしてない。彼女が死ぬのは何十年も先の事だ。まだ僕たちには出会って間もないし、一緒になって少ない思い出しかない。
結婚式も挙げてないし、御三家での挨拶もまだ。子供だって作ってないからこの子が死んだら形あるものが消える。だから死なれるって事を考えたくなくて、常に危険から遠ざけるようにそんな未来になるようにって心掛けてた。今回の任務だって、危険じゃないって判断して僕も許可を出してた。僕が危険じゃないって思い込んでたんだ……!
……なんで呪霊が死体被ってわざわざハルカを狙うんだよ…。
僕にも彼女にもどうしようもない天与呪縛に鼻から笑みが溢れる。生死の天秤が死に全振りしてどうすんだ。
生きろ、生きろ、生きて……お願いだから。願いを込めて胸をリズムを取るように圧迫する。
──ねえ、ハルカ。生き返って、僕も幸せにしてよ。
キミを幸せにすると誓った時に、幸せにし返すって言ったろ?今がその幸せにし返す時だと僕は思うんだけど?
僕が汗だくになりながらも心臓マッサージを続ける中、返事をしてくれない反応の冷たい眠り姫に空気を口移して送った。