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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第23章 突然ですが、さようなら


ゆっくりと一回、力なく弾き出されるように送った空気が戻って、また彼女の口元に齧り付くように覆い、もう一度、と繰り返して。

心臓と肺の蘇生を一回目が終わる。
それだけでは自ら生きようとするハルカの身体の反応は戻って来なかった。

「……一回じゃそうキミは揺らがないのも知ってる」

この子は僕が手に入れるのにとても苦労した。僕もオトナになってからの恋が理解出来なかった事もあるけどさ。でも高専時代にはスパッ!と"これは恋だ"と自覚出来たんだから、きっと僕は出会う場所が変わろうとも、何度でもこの子を好きになってるんだろうなって思う。
ここまで手に入れたのならもう二度と手放すものか。
二回目の心臓マッサージを始めた。単純でありながらも呪いとの戦いより緊張感があった。戦闘というよりも今が命のやり取りをしているんだと実感してる。僕がこの心肺蘇生を諦めたら終わり。
諦めない限りは血液も体をめぐり続けるはず…そして定期的に憂太がハルカを治す。淀んだ血液や酸素不足で壊死・腐敗が徐々に始まっていくだろう見えない箇所をしっかりと治して貰ってなんとしてでも彼女を取り戻す。

タッタッタッタ、とこちらに向かって大きくなっていく駆けてくる足音、そして独特な呪力。全力疾走で僕の頼んだものを持ってきてくれたんだろう。

「五条先生っ持ってきました!」

片手にオレンジ色のハードケースを持った憂太が僕の側にやってきた。急にはその足を止まりきれないって事も考えて数歩手前で止まり、靴底で滑ってようやく止まって。

……素肌を晒すのが恥ずかしいだとか、僕の奥さんを人前で剥くだとか文句は言ってられないしね……と、憂太からAEDを受け取る前にハルカの首筋から下に向かって、両手でインナーを掴んでビリィ、と音を立てて破った。治療というか手当てしてる関係者が離れた所に居るとはいえ、こればかりは命の方が大事。胸を覆う下着も真ん中で引きちぎって。

「……っ」

「…ふ、お気遣いありがと、憂太」

曝け出された上半身。ハルカ自身や憂太が治療したとはいえ、傷付いた体から溢れた血は残ってる。衣服がそれを吸ったとはいえ僕が見慣れた、綺麗な曲線の身体を少し顔を赤くして憂太は見ないようにばっ、と顔を背け、その片手はしっかり僕の方にAEDを持ったまま突き出してる。
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